2021-12-09

Frida

 フリーダ・カーロ

「そして彼女は立ち上る炎」という歌詞で始まるのはトルソワ選手のSP。

映画「Frida」サントラの1曲 Benediction and Dream(祝福と夢)の冒頭である。女性ボーカル Lila Downs(リラ・ダウンズ)の叫ぶような歌声が会場に響き渡り一気に観客の心を掴む。情熱のステージが氷上にセットアップされる。

Y ella es flama que se eleva         そして彼女は立ち上る炎
Y es un pájaro a volar                  そして彼女は飛びゆく鳥
En la noche que se incendia         燃え上がる夜に
Estrella de oscuridad                 闇夜の星は
Que busca entre la tiniebla           暗闇を彷徨し
La dulce hoguera de el beso         キスという甘いかがり火を求める
Que mal amor en sus labios         唇には何ていけない愛か
El infierno es este cielo                地獄とはこの天国のこと

「Frida」はメキシコの画家 Frida Kahlo(フリーダ・カーロ)の生涯を描いた作品。映画がリリースした頃、国際線フライトで見ようと思っていて爆睡してしまった記憶がある。トルソワ選手がSPで演じると知って見ることにした。

聡明で快活なフリーダの人生は自由奔放。しかし悲しく辛い。そして痛い。

18才で交通事故による瀕死の重傷を負ってしまい47才で生涯を閉じるまで何回も手術をすることになる。共産党運動、結婚、妊娠、流産、離婚、再婚、不倫と波乱万丈の人生を送っている。

フリーダの作品には彼女の溢れる激情と現実が緻密に描かれている。自叙伝のような数々の自画像と身に着けていたギブスやコルセットなどの遺品を見ると身体と心を自分の思うようにできなかったフリーダが自己表現の情熱を絵画に注ぎ込んだ生き様が見えてくる。

ティーンエージャーのトルソワ選手がこの映画を観たかどうか分からないがキャラクターがよく演じられていると思う。媚を売るような女性役ではなく、ぶっきらぼうで直情的、感情と意思の強さをストレートに表すフリーダの個性が自然にトルソワ選手に合っている。

振付けも巧妙にできていてパッケージングも良く考えられていると思う。

スピンの前後やステップにテーマが一貫して表現されている。トルソワ選手はジャンプ着氷時にかなりの前傾姿勢となるがその前傾姿勢を振付けに組込んでいる。赤毛にしたのは本人の趣味だった?と思うがセンターパーツの髪や濃いアイライナーの目で下から見上げる眼差しの多い振付けがキャラクター作りに一役買っている。トルソワ選手の繕うことのない一種のぎこちなさも欠点とならず逆に上手く生かされていると思う。

使用曲3曲は全てサントラから。

Benediction and Dream(祝福と夢)
Solo tu(君だけが)
Alcoba Azul(青い寝室)

Solo tu はギタープレイのみ。Alcoba Azul はリラ・ダウンズが寝室での情熱を歌っている。リズムとサウンドはスペインやアルゼンチン風とは少し違ってメキシコの土臭さと明るさが感じられ大らかで純粋な心情を表している。

17才の選手には少し荷が重い歌詞かもしれないが- 今季前半はメキシコ系の人やスペイン語を解する人が多いアメリカで2回演じられて良かったと思う。

北京五輪の女子戦ジャッジ13ヶ国(ISU文書2428)にはスペイン語圏はなく歌詞はあまり伝わらないか。

これまで4試合で演じている- テストスケート、USクラシック、ロシアカップ第1戦、スケートアメリカ。

こちらはテストスケートの動画。調子が上々だったのだろう。早く競いたい、跳びたい、演じたい気持ちが一杯のトルソワ選手にいつも諭すように話しているトゥトベリーゼコーチの様子が見られる。

YT:2021-09-11 テストスケート SP

PR & UR & エッジ & フルブレード

シェルバコワ選手のジャンプの問題は3年連続でロシア選手権で積極的に容認され既成事実が積み上げられ国際試合でも容認行為が定着してしまった。そしてついにストックホルムでチャンピオンにしてしまい4大問題- プレローテーション、アンダーローテーション、LzとFのエッジ、トゥジャンプのブレード使い -は見過ごされる傾向となった。

しかも試合毎に判定が異なることはなく見過ごされるのはロシア・サンボの選手のみと決まっている。サンボの選手はURは比較的少なくとも他の3点は頻繁にやっている。しかし採点に反映されることはまずない。一番度合いの大きいシェルバコワ選手がOKならば他の選手は皆安泰である。

GPS露杯では男子の変形ジャンプまで出現しこれも優勝させてしまった。

あり得そうもないが、正しく審判された場合- LzとFを一試合で8本跳ぶこともあるシェルバコワ選手などはどの試合でも得点は随分下がり順位も下がるだろう。

ワリエワ、トルソワ選手の場合はシェルバコワ選手ほどではないがPRがありFのエッジも曖昧なことがある。

またワリエワ選手のジャンプは着氷後あまり流れない。コンボジャンプの途中でエッジを翻す原因の一つかと想像している。

昨年5月、ISUが一部ルール改定を発表し7月に撤回するということがあった。フィギュア界を騒がせた「4Lz、4F、4Loを同一基礎点にする」と共に「コンボジャンプ中のエッジチェンジはGOE減点-1から-2」という規定がシングルとペアのGOE評価項目に加わった。7月の撤回でなくなりワリエワ選手にはラッキーだった。

いずれにしても今に始まったことではないがGOEもPCSもサンボ選手には高めの得点がつく。もはや競技において実力・能力を競い合いその差を測定するためにある判定ルールとしてはGOEもPCSも機能していない。どういう経路で誰がいつどの様にロビーイング活動を行うのか一般人には見えないがGOEとPCSは測定基準ツールではなく政治力を反映させるツールと化してしまっているのは明白。

相対的に見れば現時点の露女子選手の中ではワリエワ選手の実力が抜きん出ていると思う。来るロシア選手権では誰をどう採点するか、サンボ選手の間でもエラー容認の差をつけるかどうか。人気が高く同情が集まっているトクタミシェワ選手に国際試合と同様に過剰なGOEとPCSを出すかどうか。ロシア選手権女子戦でどの様に基礎点、GOE、PCSをころがすか採点行為の見所!が多い。

34.9億ドルの自画像

そういえば先月フリーダの自画像「ディエゴと私」がニューヨークの競売で34.9億ドル(約40億円)で落札したとニュースで読んだ。中南米のアーチストでは過去最高の価格らしい。

トルソワ選手にとっては縁起の良い話?

ニュース記事はこちら。

時事ドットコム:2021-11-18記事

CNNジャパン:2021-11-19記事


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季節柄皆さまご健康に留意されますように。





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