2019-09-03

紀平梨花 - 実力は十分、疑問は連盟とコーチの力量に ②


前回に続いて紀平選手のコーチ環境について話題と考察。

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今や濱田コーチはノービスからジュニアぐらいまでの躾と基本教育においては世界のトップコーチの一人だといえるだろう。しかし心身共にグングン成長しているシニア選手を五輪チャンピオンになるまでコーチする裁量は十分にあるだろうか?

ちょうど昨年の今頃のインタビューでアルトルニアンコーチはアップの方法やSPとFSに中一日ある場合の休み方などスケート技術以外にも教えることはたくさんあると言っている。世界選手権終了後に紀平選手のアップの仕方を批判する言葉がメディアに漏らされたがこういった内容はコーチが教えなかったら選手はどこからどうやって習うのかと思う。

アルトニアンというとヘルシンキワールドでネイサンが靴問題で四苦八苦していた折にあらゆる手を尽くして必死になっていた姿も思い出す。昨年の全日本での紀平選手の靴問題に関して、良い経験として本人にやらせた、というような田村コーチの言葉を知って大変驚いた。全日本は重要ではない?ワールドか五輪だったら助けるのだろうか?

ノービスの選手ならオズの魔法使いの話も良いのかもしれないが、オーサー、エテリ、ミーシン、アルトルニアン、タチアナも、世界のコーチで試合に向かうシニアの選手を元気づけるためにおとぎ話をした、という逸話を聞いたことはない。4CCのFS演技終了後「集中を欠くことがなかった」と言って上がってきた紀平選手に「ライオンになれた」とまだ言っている姿に独りよがりなコーチングの側面を感じた。NHK杯前の広島話はご自身の体験ゆえ、紀平、宮原両選手の心に響いたのであろう。しかし何でもオハナシをすれば良いというものではない。

日本は最大5個のメダル獲得もあるかと予測されたさいたまワールド。濱田コーチがジョウ選手のK&Cに座る話は世界選手権から検討されていた様で国別で実現したが、もしさいたまアリーナでやっていたらクラウンと見えてしまっていただろう。

SPで3Aを入れる事はアドバンテージ。さいたまワールドでの戦略はSPで3Aを2AにするかどうかではなくFSの3A2本を1本にするかどうかだったと思う。FSに2本入れることや優勝を狙うことよりも確実に表彰台に乗ることの方が重要だったのではないだろうか。たとえどのような経緯による結果だったとしても今季のメドべデワ選手はワールド銅メダリストとして採点されその差は大きい。

ジュニアの試合ではルール上SPで3Aを跳ぶことはできない。紀平選手にとってSPで3Aをコンスタントに入れる経験ができた事は昨シーズンの収穫であろう。因みにシニア女子のSPで単発の3Aを入れても良いルールになったのはバンクーバー五輪後、確か2011-12シーズンから。浅田真央さんによって開かれた道といえる。

紀平選手がコーチ替えするとしたら今季かと思っていたがどうやらこのまま北京まで続行の様である。

コーチというよりインストラクター感が強い多くの日本のコーチ陣営にあっては英語がある程度できて世界にネットワークを広げている濱田コーチは数少ない希望の人材でもある。スケート教育が好きで情熱一杯に体当たりで臨む姿は微笑ましくもあり平昌で五輪コーチとしての経験をできたのは良かったと思う。

紀平選手が五輪金をめざして進む北京までの道のりを作り上げてゆく一つひとつの布石となるゆえ各試合の運びと結果はどれも重要になるであろう。五輪以外の試合に対しては決して優勝目標を口にしない紀平選手だが、北京までに2世代出現するかもしれないロシアや財力を投入しメディアもあげてイメージ戦略総決戦で挑んでくるアメリカと対決してゆくこれから、着実に実績を積んでゆける様にと思う。道のりは濱田・田村両コーチにとっても成長と経験の過程になるのであろう。日本人コーチによる初の五輪金を目指して是非鍛錬して頂きたいものである。

思えば羽生選手は都築コーチや阿部コーチと先見の明がある指導者に恵まれていた。ニースワールドの後のビデオメッセージで阿部コーチは17才の青年に敬語で祝辞を述べていた。海外の先生にみてもらわなくてはね、との言葉が出たのもあの頃だったと記憶している。選手として芽が出るまでは財政面が大変なこともあるだろうが領分をよくご存知な人々に囲まれて何事もタイミングを外さずに決断し実行してきた羽生選手。大偉業を成し遂げたのはご本人の才能と努力に加え戦略面も最善を尽くしてきた結果であろう。

紀平選手の初戦オータムクラシックまで1週間。オーサー&メドべデワの居るカナダでジャッジがどんな採点をするのか、どの様な試合展開になるのか-今後の明暗を分ける大事な試合となりそうである。


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