2019-12-31

GPFと全日本 1


Origin in Torino

2年ぶりの4Lz、きまれば史上初?の3A+3A+SEQ、初めてのクワド5本...今思い出しても目まぐるしい試合だった。シーケンスが抜けたのは残念だった。良かったのは5本入ったことと4Loと4Lzが共存できたこと。2017年のGPロシア杯で同じようなFS構成(当時はジャンプは8エレメンツで全部で13エレメンツ)を予定していたが試合ではできなかった。

日々の練習では色々な想定でやっているのであろうが、2年前は十分に準備してあっても出来なかった内容を今回はSP終了後に急きょ変更してほぼ達成できた。要所は押さえられた。ループとルッツはとても良かったと思う。特に4Lzはネイサン・チェン選手よりも高いGOEになると思ったが結果はさにあらず。3.94と4.27であった。

チェン選手は5種類のクワドが跳べる、ということになっているが試合で跳ぶのは主にLz、F、S、Tの4種である。記憶では4Loを跳んだのは国際試合・米国内試合を通して1回だけ、五輪イヤーの初戦USインターナショナルクラシックのFS冒頭であった。当時見た動画は見つからないが-チェン選手の地元ユタ州での試合で着氷が決まった瞬間大歓声が上がっていた。離氷前に大きく構えた体勢をとり5種類目をレジュメに加えるべく決意がみなぎっていた印象が残っている。

以来今日に至るまでループジャンプは3回転でさえ1本も跳んでいない。五輪イヤーの前年、シニアデビューをした2016-17シーズンには3Loを数回跳んだかと記憶している。

つまり公式記録に残りレジュメに記載されていてもチェン選手が4Loを跳ぶ可能性は低く、羽生選手の4Lzが安定してくれば互いに4種クワド持ちとして互角のジャンプ構成を組めることになる。チェン選手は平昌五輪と続くミラノワールドでFSで6クワド着氷という前人未到の記録を残したが、いずれもループは跳んでいない。昨シーズンから変更となったルールの下では6クワドは5種跳ばなければ成立せず4種持ちでは5本が投入可能な最大本数となる。トリノの5クワド対5クワドが現時点での現実的な頂上決戦の構成だといえる。

今回初めてチェン選手のPCSが羽生選手を2点も上回った。GOEも羽生選手の17.71点に対して32.41も付いている。ミスの少ない演技を続けていくとPCSとGOEが上がってゆく、というジャッジングの傾向は習慣的なことでありルール上定められたことではない。しかしこれまでの歴史が証明している通りジャッジの心理が慣例や組織体の影響力に囚われない状態になることはまずありえない。

チェン選手が平昌FS以降負けたのは2018年GPフランス杯のSPのみ。それ以外のSP、FS、総合順位はすべて1位である。最近ではパトリック・チャン元選手や全盛期のメドべデワ選手もそうだったが、ジャッジにとっては安心して+5をポンポン押せる絶好の機会を与えてくれているのである。限られた時間内に項目ごとの細かい評価と採点を客観的を行うことは難しい。かくして、たとえジャンプの評価項目が定められていても、きちんと判定もしないままチェン選手の3Aやかつてのメドべデワ選手の3Lzに平気でGOE満点を付けたり、チャン元選手のPCS全項目を彼の秀逸なスケーティングと同じレベルに一気に引き上げたりする結果となってきたのである。一貫して安定している選手の演技には観ている方はハラハラせずに済むものだが、ジャッジに至っては評価もそこそこにブラインド採点をしてしまう心理状態に陥るのであろう。

初披露の4Aと初挑戦の4S in Torino

地観戦をしていたユヅリスト達のお陰で4Aの練習動画を見ることができた。コーチが居たらやらせなかったという。今振り返れば、確かに数回の転倒による消 耗は全日本まで続く疲労蓄積に加担してしまったかもしれない。しかし、何かを残したい、との本人の望み通り未来に一光を投じたと捉えたい。

紀平選手は4Sに挑戦できて良かった。試合では順位をかけた勝負と新エレメンツの投入経験という2側面を天秤にかけなければいけない。勝つためにはリスクを冒さず安定の演技を納めた方が良い。しかし新エレメンツは練習でいくらできても試合に入れることを繰り返して初めて自分のものになる。羽入選手の4Sもソチ五輪シーズンの前年(2012-13)から試合の冒頭で挑戦し続け転倒や抜けなどミスを繰り返し安定したのは2015-16シーズンだった。

ザギトワ選手の休養に伴い紀平選手のワールドスタンディングは4CC後に1位に上がると予測される。4CCとワールドの間にB級試合にも出場する様子でどのみちワールドのSPで最終グループに入るのは確実。GPFでブロンズを狙うよりも4S投入の経験をする意義の方が大きかった-トリノでの挑戦は正解だったと思う。 

全日本選手権あれこれ  
演技後のK&Cであれほど疲労感に満ちている羽生選手を見たことはない。打撲など負傷を受けた2014年GP中国杯でもあそこまで息づかいは荒くなかったと思う  

試合の連続で国際移動が続き体調管理が難しかった、と指摘されてはいるが-GPS、GPFのスケジュールとアサインは6月に発表されている。スケートカナダは国内といってもトロントから3時間の時差がある都市での開催である。  

事前にスケジュールを煮詰められない事情でもあったのだろうか。日本での練習・調整を希望していて叶わなかったのだろうか。予期せずして喘息症状が出たのだろうか...気をもんでも仕方ないが心配は続く。  

いずれにしても新年の2試合にはベストコンディションで臨めるようにと思う。  

昨年から気になっているのが紀平選手のパッケージング。アクセルとクワドを常備しゆく世界のトップ選手の一人である。好みの問題とも思うが-大きな髪飾りや派手な刺繍ワークの衣装で目を引くことはトップ技術を持つ紀平選手には何か不釣り合いに感じてしまう。シニヨンは似合わないと思っている様子だがジュニア時代のSPツィガーヌでやった折はすっきりとしてプログラムにも合っていたと思う。

全日本を観て - ポニーテールはもうこのまま北京まで行くのだろう、と諦めがついた(笑)。2年間ずっとやってきてジャッジ側も見慣れてきたと期待したい。ジュニアっぽい稚拙さを感じず、たなびく髪をうるさく感じなくなっていればそれで良いのだろう。「ポニーテールの闘士」「ポニーテールのチャンピオン」等トレードマークにもなってよいのかもしれない。ポニーテールというと3年前の浅田真央さんのファイアーダンスを思い出す。振付け、パッケージングとも真央さんの魅力を引き立てる素晴らしいプログラムだった。  

紀平選手の優勝と共に喜ばしかったのは川畑選手の活躍である。3Lz+3TはSP・FSとも出場者の3+3の中で一番良かった。17才のジュニア選手~日本や北米の凄い所はこういう選手が居ることだと思う。今のロシアではあまり見られないケースであろう。  

宇野選手にもリズムが戻ってきて良かった。コーチとなったランビエル氏もさぞ嬉しいことだろう。トリノでの羽生選手にしてもそうだがコーチ陣の存在の大きさと重要さをあらためて認識した。 


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ご訪問ありがとうございます。

新年が皆さまにとって健康で明るい1年となりますように。
Happy New Year!
Bonne année!


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