2020-01-06

GPFと全日本 2 オフィシャルの役割分担


ジャッジング エトセトラ

あまりジャッジの事ばかりになると演技観戦の楽しさが薄れてしまうかもしれないが話は尽きない-笑。

今回注目したのはGPFと全日本両方に入った日本人の前田真美氏。ここ1年で随分と起用されている様子である。

昨年3月さいたまワールドの女子戦で - レベル判定、エッジエラー、URなどエレメンツのテクニカル判定に見逃しが異常に多かったとかなり指摘されていた。「TCは寝ていた」「判定はザルだった」など各国語の表現もバラエティに富んでいて(笑)面白い。

さいたまでテクニカルパネルの中心であるTC(テクニカルコントローラー)を務めたのが前田氏である。日本人で男女シングルスのISUのTC資格を持っているのは岡部由紀子氏と並んで2人だけ。国内試合には頻繁に登場するベテランの前田氏であるが世界選手権はさいたまワールドが初めてであったようだ。


五輪や世界選手権のオフィシャルを務める事はジャッジ、TC、TSの資格を持っている人々にとって最高の栄誉であろう。ボランティアだとはいえキャリア開発から見ても重要な経験と見なされると思われる。

トリノGPF男子戦では岡部氏がTCで前田氏がジャッジとして5番席に座った。全日本選手権男子戦では再び岡部氏がTC、前田氏はレフリーを務めた。

因みに2018年ミラノワールド男子戦のTCは岡部氏であった。そして翌年さいたまワールド女子戦のTCが前田氏。世界選手権のテクニカルパネル国はISUの会長によって任命されるが、2年連続でシングルスのTCに日本が任命され信頼の程がうかがわれる。

さて、新年のISUチャンピオンシップの3試合、欧州選手権、4CC、モントリオールワールドのレフリーとテクニカルパネルはどの国が選出されたのか興味ある所である。ISU憲章によればGPS、GPFなどと同時に8月には決定しているはず。通常は試合の2、3日前、公式練習開始前ぐらいにはリザルトページに記載され一般に知られることになる。トリノGPFでは掲示されたのは試合直前と遅かった。

ジャッジの方は抽選結果が10月に発表されている。


オフィシャルの役割分担

全日本終了後、岡部氏が参加者を慰労するツイートを出して話題になった。

スケート連盟が主催管轄する試合であるゆえ慰労は連盟のリーダーの役目ではないだろうか。善意から発した慰労の意を個人宛てに送ることは悪いことではない。しかし、たとえ連盟の役員職(渉外部長?)を持っていたとしても試合の採点をするオフィシャルズの一人として参画した人物がこういったツイートを一般に向けて流すと混乱を起こしてしまう。立場の違いを理解したほうがよい思う。

試合参戦者、オフィシャルズ等試合のプレーヤーは全部で200人に満たない程であろうか。会場では数千人そしてその何百倍もの人数が世界中から全日本選手権を観ているのである。そしてその大半は岡部氏を連盟の渉外部長としてではなく試合のTCとして認識しているのだ。

岡部氏はトリノでもTCを務めた訳であるがGPF参戦者に対する慰労の言葉を一般向けにツイートなどしないであろう。開催者・主催者であるイタリアの連盟やISUを差し置いて行うことではない、と説明すれば良いのだろうか...ここまで書いて岡部氏のツイターを確認してみると驚いたことに全日本と同じ様なツイートがGPF直後にも発信されていた。そしてその他の試合でも同じ様子である。

フィギュアスケートの歴史と風習

フィギュアスケートはテニスの様にクラブスポーツから発達した。内輪で仲良く楽しくやりながら少しづつ競技スポーツとして発展してきたのだろう。テニスの方は競技形態がスッキリと形成されたが、フィギュアスケートは厄介なことに審査スポーツであることにも起因して独特な「村文化」を土壌として発達し今日まできていると理解している。競技形態はいまだ発展途上にあると言える競技後のGala、正装でバンケットなど競技とはかけ離れた内容が試合開催のたびについて回るのもフィギュアスケートならではの伝統であろう。五輪ではさすがにバンケットは無いように理解している。

前時代には競技といっても、審査員、競技者、コーチ、家族、記録保存、映像撮影、寄付者募集など挙げるときりがないが試合開催に伴う諸々の役割や仕事は全てクラブ内の既知の人々とその知人で行われていたのであろう。コーチや家族が審査員をやったり、役割に関わらず製氷を手伝ったり、怪我中の選手が音楽担当をやったり写真を撮ったり、とボランティア精神が溢れる家族的な温かい集いだったに違いない。

こういった精神は現在も続いている。ロシアは状況が異なると思われるが、日本や北米ではコーチ業、審査員、連盟の役員、フィギュア関係のメディア業、と1人が複数の役割に携わっているケースは多々ある。ほんの一握りのトップコーチを除いてコーチ業だけあるいはメディア業だけで生計を立てる事は難しいという事実が一つの理由であろうが、もう一つは別の職業を持ちながらも何らかの形で関わり貢献してゆきたいフィギュアスケートへの情熱ゆえであろう。

今季から各国の連盟の会長職にある者、競技者の家族やコーチなどはオフィシャルはできない、というISUの規定が有効となった。

「えっ!今まではやってもよかったの?」
「Yes]

五輪競技となって100年以上経てやっと主体者側からこういったルールが打ち出されたことをもって長年の慣習を変えることの難しさを推して知るべしである。ワールド・スポーツとしてのフィギュアスケートの基盤が確立しつつある現在、内輪で手作りの運営で成り立ってきた競技形態の伝統を改め明解で適切な競技ルールと運営ルールを設定・施行することが肝要となってきている。村文化からくる偏向性は、ルールより慣習に基づく採点行為を招き国家組織力の介入を許す土壌を作ってしまう。少しずつでも規定を整えてゆくことによって現実の運営も改善されてゆくと期待している。体制が改善しオフィシャルに入るジャッジらも心持ちを律してゆけるようになるまで一体どの位時間がかかるのだろうか。また100年?笑

3に続く。



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ご訪問ありがとうございます。

新年が皆さまにとって健康で明るい1年となりますように。
Happy New Year!
Bonne année!


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