2019-12-03

GPシリーズを終えて雑感 ①


ジャッジング全般

フィギュアの試合はジャッジ込みで観ている。参戦側の調子、出来具合に加えてどの国のどのオフィシャルが入るかは試合結果を大きく左右する。良いか悪いかは別として政治や戦略は必ず存在するという前提で見ている。

ISUのチャンピオンシップや五輪では審査・採点に関わる17人のオフィシャルも立役者の一部として選手30人(男女シングルスの場合)と合わせて総勢47人によって創り上げられるドラマ!と捉えての観戦である。

オフィシャル17人の内訳は - レフリー、テクニカルコントローラー、テクニカルスペシャリスト、アシスタントテクニカルスペシャリストそれぞれ1名ずつとジャッジ13名。

ジャッジ13カ国の抽選はシーズン始め10月頃にある。五輪はチャンピオンシップとは別日程で平昌は9月だった。試合当日SP・FSそれぞれの試合開始45分前に13名が集まり9名が抽選される。8人はSP・FSどちらか一方、5人は両方に入ることになる。

レフリー、TC、TS、ATSの4名はISU会長によって任命される。ISU規定によるとISUチャンピオンシップ、五輪に加えGPシリーズ、GPファイナルも会長によって任命されるようである。

GPS、GPFのジャッジ9カ国は試合開催国によって選ばれ、チャレンジャーシリーズを含むその他の国際試合では全オフィシャル(レフリー、TC、TS、ATSとジャッジ)が試合開催国によって選ばれる。

手順としては - 抽選、任命どちらの場合も選ばれた国の連盟が誰を派遣するか決めるようである。

北京五輪のレフリーとテクニカルパネル

今季始め、五輪のレフリー、TC、TS、ATSの選出について新たな規定が追加された。

ISU文書:Communication 2265

項目の1.4によれば、前年の世界選手権で1位から5位の国からは五輪のオフィシャルは選ばれない、というものである。

つまり2021年のスウェーデンでの世界選手権で1位から5位に入賞した選手の国からは北京五輪のレフリー、テクニカルパネルは任命されない、ということになる。例えばネイサン・チェン選手が5位以内に入れば北京五輪の男子戦でレフリー、テクニカルパネルに米国が選出されることはなくなる。ロシア女子、日本女子も同じ状況になると予想される。

ストックホルムでの試合は今から1年4か月後。どの様な試合展開になるか細かい予測はできないが有望選手を抱える国にとってこの規定は重大な意義があろう。

ACIの採点

今季最初のCS戦オータムクラシック男子戦のオフィシャルに早速米国の必死の攻防戦を見て取ってしまい(笑)これは著しい採点傾向がでるだろうと予想していた。

レフリー      アメリカ
TC          アメリカ
TS          メキシコ
ATS        カナダ
ジャッジ7人  アメリカ、メキシコ、カナダ、アイスランド、ドイツ、日本、オーストラリア

11人のオフィシャルに米国から3人、メキシコから2人も入っている。規定では五輪、ISUチャンピオンシップ、GPS、GPFではレフリーとテクニカルパネルの4名は別々の国から選出することになっているがその他の国際試合ではTC、TS、ATSの3人を別国からとなっており、レフリーの出身国は重複してもよいことになる。

北京で男子戦のレフリー&テクニカルパネルに米国が入らないことはほぼ確実。ACIのような試合は大国アメリカの影響力を発揮する絶好の機会だったと想像している。

TSになったメキシコのオフィシャルは試合の経験が少ない。今回を含めて7年間で7試合。そのうち大試合は今回と昨年のACI女子にATSとして参加した2試合のみ。これまで4回転を審判した経験もほとんどない様子...昨年B級試合でロシアのジュニア男子が跳んだ1本(4S<)のみ、1回だけのようである。

ACIで男子が跳んだ4回転は20本以上。これだけのクワドを一度に氷上で見るのも初めてだったのではないだろうか。今回の審査経験によって-「こういうジャンプはURだ」-と教化され今後の実践知識としてゆくのだろうか-

ジャッジについては - メキシコのオフィシャル、サーシャ・マルチネスは国際試合によく出てきている。2017年の4CCでアメリカのジャッジ、ローリー・パーカーと共にネイサン・チェン選手を大上げした人物でもあり、4CCの他JOにも頻繁に登場している。

SCとNHK杯のオフィシャル

N杯のオフィシャルで目を引いたのは - SCで世界中にその名を知られることとなった(笑)オーストラリアのジャッジ、リサ・ジェリネック。羽生選手のSPで3Aに唯1人GOE+4を付け9人中最低のPCSを出して一躍有名になってしまった。24時間後のFSではGOEとPCS両方にほぼ最高得点を出してその焦りぶり!がうかがわれた。ジャッジ達の正式ディスカッションは全て終了してから行われるがSPの結果発行後ジェリネック氏個人の反省会があったのか(笑)と想像してしまった。

今やジャッジが出した点数は一瞬にして世界中に知られてしまう。オフィシャルが競技者を評価、採点し順位が決まり試合が終了しその地位と権威が保たれる、という時代はとうの昔に終わってしまった。今は彼らが出す数字は全世界の人々に即時に分析されオフィシャル達の役割と仕事の質に対する評価がシビアに下される時代なのである。

ジェリネック氏は札幌ではオペレーターとして男子と女子の試合にアサインされている。オーストラリア選手権の常連であり東南アジアの試合にも頻繁に登場する氏にとって再び生でじっくりと羽生選手の演技を見ることができて良かったのではないかと思っている。


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