2020-01-12

ロシア選手権と2019ニュース色々


ロシア選手権の3人娘

シェル・トル・コストルの3人が表彰台を独占する、と予想しなかった人はいないであろう。「トルかコストルか」の論評の影に隠れがちなか細いシェルバコワ選手がナショナルタイトルを連覇して見事だった。

露選手権女子戦はGPF女子戦と共に今季最大に注目していた。世界中が待っていた。現地クラスノヤルスクはモンゴに近い街で女子戦は完売。ロシア連盟の対応は迅速で英語の解説者付きでYouTube配信を決めた。何かと閉ざされた感があるロシアだが一度決めると行動が速いものだ。

お陰で思う存分観戦できた。小鹿のように愛らしいシェルバコワの260点を超えての優勝に沸く会場の熱気が伝わってきた。

日本は放映権取得とかまだやっている。年間パスなどとトロトロやっているのはアメリカ。どちらもYouTubeを通して広告収入を得るというビジネスモデルに着手するに何か障害があるのだろうか。スポーツも含めて国際イベントはこれからはYouTube配信が増えてゆくであろう。テクノロジーも安定している。何しろ観る側からすると便利の一言に尽きる。

ロシアが世界にみてもらうことの重要さ、マーケティング・売りの重要さを理解すると俗にいう「恐ロシア」の力は2乗に拡大しそうである。フィギュアの才能の発掘・育成に加えて戦略面にもオールラウンドに注力するようになれば、セールスとビジネス中心の北米のお鉢をとり、才能と努力のスケーターを称えるファン層中心のアジアを凌駕するファン・パワーを創出できるようになるであろう。

演技は良かったが技術面は...シェルバコワもコストルナヤもルッツのエッジは相変わらずである。特に今回シェルバコワのルッツとフリップのエッジは滅茶苦茶に見えた。まともにエラーエッジをとられていればコストルナヤが優勝していただろう。

男子戦のTCはISUフィギュア部門のトップを務めるラケルニック氏、女子戦の方は五輪、ワールドのジャッジを何回も務めたフォミナ氏であった。ロシアのテクニカルたちにはシェルバコワのLzとFのエラーエッジ(e)もコストルナヤのLzのアテンション(!)もよく見えていて分かっているはずである。シェル・トル・コストル3人の内一人だけが勝ち続けるよりも試合毎に勝者が入れ替わる方が国としては安泰、という戦略であろうか...2週間後に始まる欧州選手権ではコストルナヤ、モントリオール・ワールドではトルソワ優勝、が目標とする所か。

国内競技で高得点を出すのは自由かもしれないが技術に関しては正確に判定した方が選手のためには良いと思う。長期的には国の優勢にもつながるだろう。世界のトップになってからのジャンプ修正・改善は難しい。前代のメドべデワ選手の例でもある-今になってルッツに苦労するのはトップにいる間3Lzに高いGOEを付けられていたことも一因ではないだろうか。最近になってやっとエラーエッジ(e)を受けるようになっても矯正するにはもう遅い感がある。不可能ではないだろうがジュニアの頃までにやっておけばずっと早く直せただろう。クワドだ、3Aだという時代に3Lzの矯正に注力しなければならない。

フィギュアのリーダー国ロシアの影響力は大きい - アメリカのアリサ・リゥ選手はFSで3A2本と4Lz2本を入れている。月末の全米選手権で転倒さえなければURもエッジエラーも関係なく181.94という得点に呼応して巨大な得点を出してくるだろう

トルソワ選手 - GPFの記者会見表彰式に愛犬を連れてきた様子を見て、やはりヒーリング・ドッグだったのか、と思った。クワド4種を軽々跳んで観ている方は感嘆するだけだが他の誰も踏み入っていない領域で戦っている15歳の少女が感じているプレッシャーと身体・精神の消耗はかなりであろう。今回は残念だったかもしれないが、ここ3年ほどの快挙は誰も近寄ることすらできない偉業であり気を落とさず次戦に進めるようにと思う。

ISUスケーティング・アワード

話題性に欠け今一つな印象のアワード。一般投票の締切日(4CC終了後の2月10日)まで1か月となった。投票結果は各カテゴリごと3人のファイナリストとして3月10日に発表される。

最終受賞者はGPシリーズ開催国からの代表6とISUの評議員1名によって決定される。6人の名前が発表され日本からは安藤美姫さんが審査員に選ばれた。フランスはスルヤ・ボナリー、中国はルー・チェン(陳露)と往年の名選手らがモントリオール・ワールドに集合し現地で投票するということだ。



エテリ組vs重鎮vs皇帝

ザギトワ選手の休養発表が発端で起こったネット上での争いは迫力があった。日本やアジアの国、アメリカ、カナダではまず起こることがない。言い争いはあってもネット上でオープンに世界に向けて発信するようなことはしないだろう。ロシアの知名人のこういったやり取りを見るとソ連からロシアへと30年経ったとはいえグラスノスチを思い起こさせる。抑えられていた感情表現を吐き出すことができる自由、そしてそれを手元にあるツールに託すことができる自由を謳歌しているように見える。

子供のケンカのようでもあり、あきれつつも見入ってしまった。ロシアの大御所たちのあのような所作からすれば日本の連盟役員の失言などとるに足らない事かと妙に安心もした。エテリチームが重鎮と皇帝へ名指しで批判を向けたことはフィギュア界のパワーバランスを揺るがす事件。あれだけの事を言えるほどエテリ組の権威が増したのか、と今更感心した。

その後ザギトワ選手に直接会いに出向いたらしいタラソワ氏。立ち直りが速く良い事はすぐ行動に移す-さすが重鎮と呼ばれるだけある。

日本の元御三家

今季に入ってロシアの3人娘より大きな注目を浴びたのは高橋選手、織田さん、小塚さんの3人だったかもしれない。

織田氏はやや錯乱しているように見受ける。陳情を訴える自身のブログ記事は指導職を希望する内容で締めくくられている。雇う側からすると、コンフィデンシャルであるはずの職場の人事事情をブログで公にしたり、泣きながら訴訟の記者会見をしたり、と知名度の高さから世評を得る結果につながるような行為の数々は決してポシティブには映らないだろう。辞職に関して職場側はその理由が良くても悪くても人事内容の一部として公にはしないものである。また民事訴訟など星の数ほど、とまではいかなくとも毎日多数発生していて一般人は会見などはしない。新しい職場に来てもまた同じような行動をとるのではないかとの想像を促し有名人を雇うのはやはりリスクが伴うと思わせてしまう。

職場内での話し合いに弁護士を同席させた、との話も特異に見える。まず一般人は弁護士を連れてゆく経済的余裕はない。また対応した人事など職場の関係者も弁護士が来ることになれば面喰ってしまう。内部での話し合いにも関わらず弁護士が立ち合っていれば発言したことは後々法廷で証拠として使われるかもしれないと恐れてしまう可能性もある。

そもそも織田氏のように特殊な勤務形態をもっている場合どのようにハラスメント被害を測るのか興味ある所である。複数の職務環境を持つ人物の一つの職場で起きた状況をどう測定するのだろう。関大における織田氏の責務範囲は他の勤務環境とその報酬を侵害するものでもなければ保障するものでもないと思われる。

ハラスメントはやった側が悪い-シンプルである。しかし法廷に持って行けばハラスメントの事実だけではなくその他の事柄も調査されるのではないだろうか。特殊な職務環境を持っている織田氏の勤務状況、精神状態も検査・評価されるのではないかと懸念している。

小塚氏は自ら家庭を崩壊させるような行動をとってしまったようで残念である。高橋選手はアルコール依存症に陥り1人苦しい思いをしたことだろう。織田氏、小塚氏のように周囲を巻き込まなかったのがせめてもの救いか。何とか立ち直って競技者として戻ってこれて今は充実の時間を過ごせているだろうか。

選手時代にどんな偉業を成し遂げても人間として幸福になれるとは限らない。幸せとは自分の心で感じるもので社会的な地位や持っている財産で測れるものではない。世間の注目と称賛を受けるきらびやかな時間というのはあっという間に過ぎ去ってしまう。

日本のフィギュア男子の象徴であった3人が申し合わせたように同じ時期に苦渋の姿を見せていることも何か意味があるように思う。それぞれ人間として誇りを持ちながら朗らかな人生を送れるようにと願っている。


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新年が皆さまにとって健康で明るい1年となりますように。
Happy New Year!
Bonne année!








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