ＹＯＧと全加・全米選手権

ユースオリンピック

今季シニアデビューした女子選手で注目しているのは４人－　ロシアの３人とユ・ヨン選手である。ノービス時代から話題になっていたがＪＧＰＳでは抜きん出た印象はなかった。そして今季美しく成長した姿でシニアの舞台に登場した。ＹＯＧでも３Ａがきれいに決まってよかった。同じコーチの指導ゆえかナガス選手の３Ａに似ている気がする。衣装、ヘアースタイル等もシニア初年度からきっちり整えている。あくまでスケーターとしての資質が第一でパッケージングは二の次であろうが演技を見せるスポーツであることを尊重していることが伺われて好印象。

誕生日はトルソワ、シェルバコワ選手と近い。アスリートの成長過程は人それぞれでジュニア時代に世界のトップスケーターとなってもシニアで活躍するとは限らず逆もまた真なりである。ナショナルタイトルも４回目３連覇し北京へ向かってどう成長してゆくか楽しみな選手である。

河辺選手は晴れの舞台で３Ａに挑戦できた。うたしん組と鍵山選手も個人戦・団体戦で大活躍で頼もしかった。ＹＯＧの団体戦は五輪とはかなり違ったルールで行われる。各チームは複数の国で組まれていて楽しい雰囲気。個人戦の後に行われることも良い－五輪でも同じようにできないかと思う。選手にとっては個人戦が終わった後の方がチーム試合に集中しやすいのではないだろうか。

カナダ選手権と全米選手権

初優勝したサドフスキー選手はスピンが美しい。長身で振付けがよく映える。ＦＳは昨年から引き続き「シンドラーのリスト」でミュージックソースは宮原選手と同じベイレス氏の作品。カナダの選手はエッジさばきが巧みでジャンプもきまればダイナミック。試合結果は残念だったがキーガン選手もいつも見たいスケーティングスキルを持っている。

アメリカの選手は皆個性豊かである。今年は女子で２人ヒックス、イゾの両選手が３Ｆ＋３Ｌｏに挑戦した。ヒックス選手のジャンプはパワフル。特にフリップは昔から安定している。昨季から気になっている１８才のイゾ選手は今季はＪＧＰＳ２戦に出場。アメリカらしからぬ！優美さを感じさせる演技で技術も良くなっているように見える。

日本も北米もヒックス、イゾのようにジュニアからシニアへと順々と進み毎年少しずつ向上しながら、たとえ国際試合で大きな結果を出せずとも長く競技を続けていく選手が多い。層の厚さゆえ国際試合に出れない選手も多い。表彰台に上がったベル、テネルも２３才と２１才。Ｇゴールドやカナダのデールマン選手は心の病を抱えながらも試合で闘い続けていて感動は尽きない。皆学業や将来のこともあり現役を続けることには様々な障害があるだろうが観戦する側としては嬉しい限りである。

４連覇したチェン選手－　昨年は３４２点で今年は３３０点。プロトコルは演技の映像と共に笑いの種として後世までずっと残る。国際試合も同じであるが、テクニカル判定、ＧＯＥとＰＣＳ採点はオフィシャルズと連盟の時々の動向を顕す揺るがぬ証拠として受け継がれてゆく。

チェン選手はＦＳで久しぶりにループ（３Ｌｏ）を跳んだ。以前触れた通りループはほとんど跳ばず国際大会では２年以上入れていなかった。ＧＰＦで世界最高の評価を得た今、限りなく満点に近づくべく比較的低ＧＯＥだったサルコーやループ等を入れて評価を上げてゆく方針だろうか。

連覇した１４才のリゥ選手－　３Ａは良くなっているように見えた。４Ｌｚは前向き着氷でＤＧと思ったが採点上はＵＲとなっている。今季ＪＧＰＳデビュー直前にはＩＳＵが真央さんの記事を出したりトリノＪＧＰＦの前後はコストナー選手に表現指導をしてもらったりと派手な宣伝活動が目立つが今の所リゥ選手はまだ北京への未知数である。ジャンプの才能は確かで今季と来季ジュニアの間にどこまでスケーティング等ＰＣＳ項目を磨けるかがキーとなるだろう。セールス活動はその後でも遅くはないと思う。

米国の国内試合では独自の競技運営も見られる。４位の選手も表彰台に上がりピューター（白鑞）メダルを受けられる。これは選手には励みになる。またオフィシャルズには通常の１３人に加えてアシスタント・レフリーが存在する。短時間で多くの仕事をしなければならないジャッジをまとめＴＣとの連携を図るレフリーを手助けする役割が合理的に設定されているのであろう。

カナダ、アメリカのもう一つの特徴は人間の多様性であろう。あらゆるスポーツに共通すると思われるがアスリート達の多様性はおそらく世界一かと思う。ロシアが地理的にも大国で元々多民族国家である以外は欧州国は北米と比べると遅れてはいるが少しずつ人種の多様化が見られるようになってきた。アジア諸国はこの点においてはまだまだ。お国柄と文化事情はそれぞれである。多様性はフィギュアにおいては感情表現などで個性ある演技が生まれる一因となっているように思う。


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