2020-05-09

最近の話題と雑感 2

アレキサンドラ・トルソワ選手

予感はあったが北京まで2年をきった時点でのコーチ替えが得策かどうか分からなかった。五輪まで2シーズンといっても現況では試合数が限られてくる。新環境でどこまで仕上げられるか大きな疑問。プルシェンコがどこまで注力できるのか。クワドと共にスケーティングをどこまで磨き上げられるか焦点は明確と言えそうである。

トル・シェル・コストルの3人がGPF、露選手権、欧州選手権の表彰台で連立した動画や写真ではトルソワの足が一番しっかりしていて強く精悍なアスリートボディを持っているように見える。羽生選手は拠点替えをしてジャンプ、スケーティングに磨きをかけ2シーズン目に五輪チャンピオンとなった。これから650日ほどの時間を綿密に予定を立て準備すれば身体能力が著しく高いトルソワ選手に全ては可能なのではないかと思える。政治家の経験もあるプルシェンコは口も達者。コーチとしての力量発揮も楽しみにしたい。

無謀と傲慢

平昌五輪前ごろまではブライアン・オーサーに対して批判が出ると門下の選手のイメージダウンにつながるのではといった向きもあった。今はハビエル・フェルナンデスは引退し羽生選手のアスリートとしての格はオーサーのコーチとしての格を超えコーチの失態の一つや二つで揺るぐことはない感である。

ここ数年ロシアの女子選手エフゲニア・メドベージェワの奇行、愚行が続いでいる。そして今回の日本滞在騒動でもコーチ陣がそそのかされているかのような言動をとっている。

団体戦を含めて5個?の五輪メダルを獲得したコーチ陣でありスケート界では多大の尊敬と称賛を受けその名を知らない人はいない。しかしCOVID19の世界軸で見れば- お粗末にも門下生の言いなりになったのか危機に面している世界状況を理解しようとする気配もない様子は人間としての脆さを顕しているようで残念に思った。指導者、競技解説者などといったスケート界の要人の立場を離れて1人の人間としての真価が問われているのである。

20歳の成人であるエフゲニア・メドベージェワ選手の個人行動はオーサーやウイルソンの関知する所ではなく、たとえモラルを逸しても究極的には法的にも商業的にも何らの責務はないゆえ当たらず障らずでやっているのだろうか。

「フィギュアの最大マーケットはアジアだ」というオーサーにはビジネス面の興味しか残っていないのかもしれない。最近種々のメディアに現れた姿も妙にチープに見えたものだ。今年に入ってだったかメドベージェワ選手のルッツジャンプに関してのコメントもダダをこねるような内容だった。ましてや一連の奇行、愚行に連なるような言動は数々の世界選手権&五輪メダルを獲得をしたコーチ経歴にはそぐわないと思った。

エフゲニア・メドベージェワ本人に関しては- 日本に居るロシア人に対する苦情を日本のロシア大使館に訴えてもほとんど何もしてくれないだろう。せいぜいツイートを出すぐらいか。ロシア大使館はロシア人を保護・支援することはできても制裁を加えることはできないだろう。日本にいる人物を取り締まるのは地域の警察であり入国を取り締まるのは外務省。ビザを発行するのは海外の日本大使館である。

日本の自粛規制は強制ではなく、花見の席で泥酔し通行人に迷惑をかけたとしても警察沙汰になることはないだろう。ましてや簡単に飛び交っている言葉「強制送還」を外務省が履行することはまずあり得ない。今のところメディアを通して一般に知られている範囲ではメドベージェワは法に触れてはおらず危険人物と判断されるような領域に入ってはいない。しかし極端にモラルを外れた無謀な言動は少なくとも心情的には受け入れがたく諸機関宛てに陳情すれば状況のより良い改善につながるだろう。

また地域の事情を理解してもらおうと意思疎通を図ろうとした個人に対して高慢な言葉を返した事実も知ってもらった方が良いだろう。本人に理解ができないのならメドベージェワの所属機関、支援機関に知らせるしか術はない。一般人にできることは限られている。

ビザのスポンサーや受け入れ元となっている団体が分かれば同じく陳情を送れる。万が一エフゲニア・メドベージェワが法を犯したならば彼らの場合は関与責任がある立ち位置にいると思われる。

カナダの自粛規制を守らなかった経緯もある様子。違反しても日本と同じように大丈夫なのだろうか。

一般から大量の苦情が発信され何処からか何らかのお咎めがあったのかどうやらツイターを一時停止?したようである。これ以上事をエスカレートさせるような行為はもうないと期待したい。

さて- 試合をいつ再開できるか分からないがテクニカルパネルとジャッジたちがどのように採点をするか興味深い。本来、選手による7分間の氷上の演技以外のことは競技の採点に反映されるべきではないが、そういう事は未だかつてなかった。オーサーがまた奔走するのだろうか。ご苦労なことである。

ショパンコンクール

今年は5年に一度行われるショパンコンクールの年である。通常はまず4月末予選が行われ10月に本選が行われる。世界中の他のイベントと同じく4月の予選開催は難しく9月に延期となった。

10月の本選は4段階になっていて予選を通過した80人ほどが第1ステージで40人ほどに絞られその後20人となり、ファイナルステージに残った10人は協奏曲を演奏する。劇場で行われる予選も本選も一般公開され当日チケットを買えるようだ。

2020年コンクールオフィシャルサイト:Chopin 2020

前回2015年に行きそびれて今年は久々にポーランドの友人訪問も兼ねて初めてのコンクール鑑賞を10月に予定していた。旅程の詳細に手を付ける前にCOVID19が登場し幸い無駄は出なかった。秋口に状況が好転するとは思われず良くなったとしても残念だが今の所は行くつもりはない。

2015年は幼少時から注目されていた小林愛実さんが参加し見事ファイナルステージまで勝ち抜いた。全ての演奏はユーチューブで配信されており小林さんの出す音がいつも高らかに良く響くのは腕の使い方の違いかな、等と思いながらライブを見れた。ピアノの入れ替えや最後の優勝者の発表まで全部見ることができる。

課題曲の一つであるバラードOp23No1を小林さんが本選で演奏した同じ週カナダのバリー市で行われたACIで羽生選手が2年目となるSPバラードを披露していた。2人の二十歳の若人が同時期に国際大会で大曲に挑戦したことを頼もしく思ったものである。

羽生選手が使っているのはクリスチャン・ツィメルマンの演奏。氏は1975年ショパンコンクールの優勝者である。往年の名ピアニストたちの演奏を聴いても、ミスタッチなしの精度、完璧なテンポと各音色が一つも落ちることなく鮮明な響きを放つツィメルマンの右に出る者はいない。振付けに使うとしたら彼の演奏しか考えられないといつも思う。精緻な技術をもって美しい演奏を披露する所は羽生選手の演技と通じている。

今回もバラード第1番は予選、本選の両方の課題曲に入っている。開催可能となれば多くの若きアーチストによる演奏を聴くことができるだろう。楽しみである。

こちらは同じくコンクールの課題曲に入っているバルカローレ(舟歌)。深い底まで透き通って見えそうな澄みきった湖面の透明感や舟が進み水面に美しく弧が描かれていく情景が見えてくるようである。ショパンの詩は焦燥と喧噪の毎日を送る私たちに潤いと彩りを与えてくれる。読者の皆様にゆっくりくつろいで頂ければと思い紹介したい。

ビデオ ツィメルマンの演奏:Barcarolle Op. 60 by Krystian Zimerman

ビデオ ネーリングの演奏:Barcarolle Op. 60 by Szymon Nehring

シモン・ネーリングは小林さんと共にファイナルステージまで進んだポーランドのピアニスト。2015年のコンクールで演奏された幾多のバルカローレの中でバランスがとれた美しさを放った秀作だった。


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ご訪問ありがとうございます。

皆さま十分気を付けられてご健康ご無事であられますように。






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