ネーベルホルントロフィー & ブダペストトロフィー
フィギュアスケート文化が深く根付いている- 欧州のフィギュアは廃れたと言われるもののCS戦のヨーロッパ試合を観ていつも感じることである。
中堅の選手や五輪経験者も数人出場している。ネーベル杯とブダペスト杯両方に出場した選手もいる。
ブダペスト杯で優勝したヘンドリックス選手の3Lz+3Tが良かった。SP・FSとも安定した演技ができるのはこの状況下でも着実に練習を積んだゆえかと思う。グラッスル選手も迷わず進んでいると感じた。バシリエフ選手は逞しくなった。
ブダペスト杯ジュニア女子戦でシャボトワ選手が3Aに成功して優勝した。3月の世界ジュニア戦ではUR&転倒だったが遂に着氷し加点も付いた。ウクライナのシニア戦女王でもあり来季は正式にシニアデビューし五輪も開催されれば代表となるだろう。
サイドコラムにリザルトページのリンクを追加した。
ロシアカップの女子選手
シェルバコワ選手のプログラムはSP・FSどちらも彼女のたおやかさを強調していて所作がとてもエレガント。昨季にもまして動きがよく音楽に合っている。
しかしジャンプは- 年々大変になってきているようだ。エッジとスピードとタイミングで跳ぶというよりも主にキックと上半身のヒネリの力で跳んでいるように見える。あれでは体形変化、特に上半身の成長と共に跳びづらくなってゆくだろう、と言われてきたことが徐々に現実化している感。
キックジャンプは減点対象ではないはずだがコストルナヤ選手よりも派手なキックで離氷直前の前傾姿勢もより深くなってきている。ジャンプに入るごっつい構えとビッグ・ハンマーキックでそれまで醸し出していたエレガンスは吹き飛んでしまう。着氷後すぐにまた愛らしい雰囲気になり次のジャンプ離氷時に又ガツンと格闘技姿勢に戻る-この繰り返しで演技を見終える。18-19と19-20シーズンのプログラムはそれ程感じなかったが今季の物憂げな表現をするような内容だと際立ってしまうと思った。
選曲と振付けは美しく髪をきちんと結い上げSPとFSは分け目を変えたり、と細かい所までパッケージングはいつも抜かりがない。FSの音楽とコスチュームはテストスケートの方が良かったと思う。
誰よりも早くパッケージングを整え完成度も高くシーズンを始めるのは昨季と同じで戦略の一部かと想像している。
ウサチェワ選手はエレメンツをきっちりこなしていて自信に溢れている。スケーティングはシェルバコワやメドベージェワ選手と似ていて今一つ。エッジを押すよりもフリーレッグの振りで勢いをつけているように見える。エッジコントロールは上手くスピードはある。ワリエワ、フロロワ、フロミフ選手らと同期で来季シニアに上がるのだろう。ロシア女子の五輪切符獲得の争いは熾烈極まりない。
それにしてもトルソワ選手と全く同じ音楽編集(FS)にするとは- リンクサイドで観ていたトルソワ選手のイリニフコーチはマスクはしていたが目だけでも唖然としている様に見えた。試合数の少ない今季、コーチどうしの争いは私たちのゴシップ心を楽しませてはくれるがほどほどにと思う。大人のエゴをアスリートの競技内容を通してまで露わにするのは感心しない。
最後スピンで終わっているが- やっていないコレオシーケンス(ChSq1)が得点に加算されてGOE2.10まで付いている。
ウサチェワ選手はFS2位の152.81点。10番めのエレメンツ、ステップ(StSq4)の後に続けてChSq1をやり表記間違いかと思い何回か見直したがやはりステップはステップの要素だけしかやっていないように見える。コンビネーションスピン(CCoSp4)と3連続ジャンプまでの間30秒ほどの動きをChSq1と見なせそうではある。ジュニア戦用にコレオは元々振付けに入っておらず採点上辻褄を合わせただけかもしれない。
ロシア国内戦の採点に今更驚いても仕方ないと思いつつもやはり気になるものだ。第1戦のシェルバコワ選手の高得点も異常だったがレフリーはラケルニック氏が務めていた。ISUフィギュア部門のヘッドである氏が携わった採点結果はどこまで影響力があるのだろう。
トルソワ選手のFS- 衣装は昨シーズンのネぺラ杯とJOで着ていたものに少し手が加えらている。演技はジュリエットよりもロミオ風!に感じたが本衣装はどうなるか。お披露目は次回の第4戦?
SPは自分のものにしている様だがFSはまだジャンプに気を取られているように見える。トルソワ選手の身体能力をもってすればクワドを跳びかつ演技も見せるように仕上げられると思う。
ジャンプの高さにはいつも感嘆する。4Lzは惜しかった。シェルバコワ選手のブレードアシストは顕著だがトルソワ選手は言われているほどではないようだ。
ワリエワ選手のプログラムはテストスケートから随分良くなった。FSは色々と改善している- コレオは少し変え、ステップとスピンの順番を入れ替えてトレードマークの綺麗なスピン2つ(FCCoとCCo)でボレロの最後の盛り上がりを締めている。ワリエワ選手のスケーティング、ジャンプの跳び方やスピンはザギトワ選手に似ているように思うのは気のせいか。五輪はピカソとボレロでいくのか!とこちらはコウフン気味である。
ボレロというとよく引き合いに出される26年前のトービル&ディーンは今見ても確かに美しいがもう古い。
偉大な芸術は人間の心を触発する力がある。老若男女を選ばない。触発された心はまたその感動を表現することによって芸術の力を還元してゆく。音楽でプロディジーと呼ばれる子供演奏家たちが技巧だけでなく表現上も優れている所以である。
往年の名曲ボレロに触れて感得する所があるかどうかは年齢にはさほど関係ない。歳を取らなければ分からないわけではない。大曲をこなすには人生経験が必要、というのはあまり当たらない。年齢を重ねるに従って同じ芸術作品への感動が変わるということはあるだろう。
フィギュアでは25歳頃からベテランと呼ばれるようだが深みのある演技ができる様になるかというとそうでもない。20代後半といっても若い青年である。
ワリエワ選手はまだ未知の部分が多いが- 14才の心なりに感得する所があり演技を通して表現できれば素晴らしい作品になるだろう。片鱗はすでに見えている。トゥトベリーゼコーチはワリエワ選手のことを「フィギュアの奇跡」と言っているらしい。ロシアのような大国であれば他のスポーツやバレエに行くことも十分可能だったろう。フィギュアを選んでくれて有難いものだ。
ボレロといえばモーリス・ベジャール&20世紀バレエ団。マヤ・プリセツカヤ、ジョルジュ・ドン、シルビー・ギエムの動画が上がっていた。
フィギュアでもトービル&ディーンの他プルシェンコやコストナー選手も演じている。
ザギトワ選手はジョン・カリーの演じた作品に挑戦して五輪チャンピオンとなった。
数多くのアーチストによって演じられてきたボレロ。その名演リストにワリエワ選手も連なることができると思い期待している。
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ご訪問ありがとうございます。
皆さまお身体を大切にされ安全に過ごされますように。
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