N杯からロシアカップへ
SAやロシア試合が続いた後だったせいかNHK杯ではスケーティングの美しさが際立って見えたものである。膝、足首を使って途切れなく流れる滑り- ほとんどが日本人選手だった大会全体のスケーティング力はGPS4試合中最上位という印象で日本の選手のスケーティングスキルが高い事を再認識した試合だった。
翌週ロシアカップ第5戦が始まりシーズン開幕から慣れ親しんできた滑りの試合に戻ってきた感。トランジション満載の滑りや綺麗なスピンが映える。2週間前のGPロステレコム杯の設営が残ったままでジュニアやノービスの選手にとって励みになったかもしれない。
ワリエワ選手
コストルナヤ、トクタミシェワ選手欠場で7人の試合となった女子戦。ワリエワ選手がいよいよ3Aを試合に初投入。SPから入れている。しかも2AでやっていたSPエレメンツの順番はそのままでアクセルは2本目のジャンプである。しかもタノではなくリッポン跳びである。
3Aのリッポン跳びをした選手は男子でも記憶がない。ワリエワ選手はSPの他のジャンプ3Fと3Lz+3Tもリッポン跳びだった。FSでは全11本のジャンプの内3Loと1Eu以外は全て両手を上げている。
SPで冒頭以外で3Aを跳んだのはおそらく女子で初めてだろう。FSでは- 伊藤みどりさんがアルベールビル五輪のFS後半で3Aを跳んだことを思い出す。また昨季の紀平選手は7つのジャンプ要素の2番目と4番目が3Aだった。冒頭で早く跳んでしまいたい所だろう高難度ジャンプを演技後半で跳ぶのにどれ程の体力と精神力を要するか想像がつかない。
SPの3Fのエッジはフラットだった。eまではいかず!ぐらい? 第2戦では問題なかった記憶。ISUフィギュア部門のトップ幹部のラケルニック氏がまたもやジャッジ団に入りTCを務めている。ロシアカップ直後のインタビューを読むとインタビューをしている方もラケルニック氏自身もISU役員としてのコメントとロシア国内のフィギュア事情についてのコメントを混同している様子である。今後はロシアの独走が予想される流れとなってきており仕方ないのかもしれない。
感染対策の不備から大変なツケを負っていることも同じく予想通りである。ニュースになるレベルの選手名があれだけ沢山出ているという事は観客らその他大勢にも多くの感染者が出ていると想像している。
ボレロは少しずつ良くなっているようだ。コレオやステップも細かい所を変えている。ミュージカルやオペラなどを題材とした喜怒哀楽を表す人間の物語を顔の表情やパントマイムを入れて表現するようなプログラムと違って起承転結のないボレロは難しい。リズムは単調で起伏がなく4分間徐々に盛り上がってゆき最後にクライマックスに達する。ワリエワ選手の振付けは手・腕の独特の動きなどモーリス・ベジャールのバレエ振付けを意識しているように見える。テストスケートから3戦めで既にワリエワ選手にしか演じられないプログラムになっていると思う。
ベジャールの振付けは音楽と同じように単純な動きの繰り返しから始まり次第に複合化してゆき、原曲15分程をそのまま使いボレロのもたらすカタルシスを見事に表現していた。ベジャールが許可したダンサーだけが躍れたと聞いた覚えがある。当時は前衛的に見えたかもしれないが今ではモダンバレエの古典、模範のように思える。
そういえば野村萬斎氏もボレロを振付け演じている。
ビデオ:2017年4月 MANSAIボレロ
4戦めとなるロシア選手権でワリエワ選手がまたどの位進歩しているか楽しみである。
トラビアータ
ここの所スケート観戦以外はメトロポリタンオペラの無料配信でオペラ三昧の日々を過ごしている。生観劇では見られない舞台の様子や歌手のインタビューなどを幕間に見れる。インタビュアもレネー・フレミングだったりと毎回大満足。
ラ・トラビアータ
カルメル派修道女の対話
ヴォツェック
イル・トロバトーレ
ハムレット
エレクトラ
エフゲニ-・オネギン
パルジファル
マクベス
カルメン
NYメットはプロダクションが豪華でアメリカの舞台制作の粋を集めたかのようである。プロップ、背景、舞台装置、バレエ団、コーラス等どの部分にもアメリカのエンターテイメントパワーが発揮されている感。たまに華美過ぎると思うこともある。
欧州で観劇するとオペラがもっと日常に浸透していると感じる。大がかりな制作でなくとも名作を頻繁に公演していて仕事帰りに気軽に観に行ける感覚がある。時には大都市の劇場でも舞台制作も衣装などもミニマムにとどめ歌声と演技だけで演出するような公演もある。照明やプロップも超モダン、シューリアルに創られた作品もある。しかし制作はどんなに質素でも肝心のオーケストラの音質と歌手の声質はいつも一級、というのが欧州プロダクションの印象。
アメリカでは欧州を舞台とした作品が多いオペラを創るに原作当時の風習をできるだけ忠実に再現しようとすることが多いように思う。文化的、歴史的にアメリカが持っている欧州への憧憬、東を向いている姿が見えると思う時である。統合芸術であるオペラを視覚で十分楽しませてくれるのがアメリカンプロダクションかと思う。ビジュアル効果満点の舞台はこちらを飽きさせない。
トラビアータ(椿姫)は世界のあちらこちらの劇場で見ている。思い出せる限りで少なくとも8回。メトロポリタンで初めて見たのもトラビアータだった。上下ジャージ姿で見れた(笑)今回は2018年12月の公演で指揮は新任の音楽監督ネゼセガン氏。若く勢いがあった。舞台制作と演出では面白いと思った点がいくつかあった。
ヴィオレッタの尽きかけている儚い命を表しているような前奏曲は第3幕の前奏曲と同じ旋律。ほとんどの公演ではこの前奏曲が終わって幕が開きパーティ場面から始まる。有名な「乾杯の歌」が演じられる第1幕である。今回は前奏曲から幕が上がりアルフレードらが病床のヴィオレッタを見守るシーンで始まった。前奏曲の終わりと共にヴィオレッタの死が象徴的に演じられ舞台はそのままでパーティー会場と化した。前奏曲から舞台上で演技が始まる演出はバーデン・バーデン(ドイツ)の劇場でやった公演の映像で見たことがある。メトロポリタンでは初めての試みか。
アルフレードの妹役が登場したことにも驚いた。ストーリーには出てくるが役者が舞台に登場したのは初めて見る演出である。セリフも歌も無い訳だが2回も現れた。
そしてもう一つ史上初!?と思われたのは- カーテンコールで歌手と役者が挨拶しているとオーケストラピットが空っぽである。どうしたのかと思っていると最後ネゼセガン氏が舞台に出てきた後、楽団員が舞台に現れた。しかもそれぞれ楽器を持っている。舞台裏の狭く薄暗い通路を大きな楽器を抱えながら歩いてきたのだろう。全団員ではなかったかもしれないが観客は湧いていた。カーテンコールでオーケストラ員が舞台に出てきたを見たのは初めてだった。
多くのオペラは100年以上演じられてきている。トラビアータは初演の1853年から170年近くも公演されてきた。音楽もストーリーも良く知っている演目を何度見ても感動するのは、作品の音楽性、芸術性、物語性が時を超えた普遍の価値をもっている故だけではなく、自身が感動する事に留まらずそれを再現しようとする現代に生きる人々の情熱が伝わってくるからだ。世の中の人々に伝えたい、感動して欲しいと制作に没頭するアーチストたちのお陰で古典作品は人間の寿命を超えて永遠に受け継がれてゆく。
パンデミックとなり無料のビデオ配信が始まってから今週で40週めになるようだ。年末休日にかけてサムソンとダリラ、ローエングリン、ナブッコ、魔笛、セビリアの理髪師、ラ・ボエームなどよく知られている作品が予定されている。
アメリカ東部時間の7:30pから翌日の6:30p(日本時間9:30a~8:30a)まで23時間一つの作品が配信されており、いつでもどの部分からでも何回でも見ることができるので、ほとんどの作品は3時間近くと長いが何回かに分けて見ることも可能。
スケジュールとビデオリンク: Nighly Met Opera Streams
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
ご訪問ありがとうございます。
皆さまどうかお身体を大切にされ安全に過ごされますように。

No comments:
Post a Comment