2022-09-03

競技運営の文書

ISUの規則書など

フィギュア競技の運営規定、競技規則を調べる時は「特別規程書」と「一般規程書」に目を通す。PDFの2書はどちらも150ページ以上ある。「特別規程書」はフィギュア競技の規則書。「一般規程書」にはスピードスケート競技の内容も含まれている。

原文を読んで日本語の翻訳書は読んだことはない。その理由は2つある。

まずこの2書は原文でさえ読みにくい。英語を母国語としない人々が文章を書いていることは明らかで規則・規定やプロセスを記述するに文体に一貫性がなく冗長で分かりづらい。その上文書構成が最悪に近く、この手の規則書には致命傷で文書管理を専門としない人々が担当していることも明らかである。

ご存知の通り2年ごとの総会で組織規程や競技ルールの変更・追加などの案件が各国から提出され可決される。総会以外でも毎年何かしらのマイナーチェンジがある。

その更新内容を単純にあちこちに盛りこむ作業を長年繰り返してきたと思われツギハギだらけの文書となっている。それ故か一つの規定事項について調べようとすると2書に渡ってしかも複数個所に分散している内容を解きほぐし読み解いてゆかねばならない事がよくある。

他の専門分野と違って所詮はスポーツ世界の規定であり一つひとつの項目は比較的単純で決して重層・複雑な内容ではない。しかし文章の冗長さと構成の不備がこの大事な文書を近づきがたいものにしている。ISUの役員でも全部を掌握し理解している人はいないのではと思われる。

また根幹となる規程が内外によく理解されないことは競技や組織運営で何かと閉鎖的・権威的な印象を与える一因となるのではないかとも思う。

地球上にこれ以上の上位組織が存在しない最高位の国際機関の規準書でこれほど扱いにくい文書を見たことがなく、これをどの言語であれ翻訳したシロモノなど更なる混線が想像されとても目を通す気にはならない。

2つ目の理由はシンプル。日本の連盟のサイトを単純にサーチして見つからない故である。過去に何回か試みたが、そもそもあまり読む気がない所にきて簡単なサーチで上がってこないとなると、どこか深い所にあるのだろう位に思いそれ以上調べなかった。

蚊帳の外の日本人

先月JSFのサイトで試合結果をサーチしていて偶然この2書の日本語版の存在を知った。

JSF:FAQページ

連盟の会員限定で有料販売されている。

ISU組織規程・一般規程 ¥2000
シングル&ペアスケーティング アイス・ダンス 特別・技術規程 ¥2500

五輪スポーツであるフィギュアスケートのルールの基本理念や組織規定や運営手順などを日本語で知りたい場合にはこの2冊を有料で購入しなければならない訳である。しかも連盟会員のみということで一般人には開放されていない。

有料販売!会員限定!への驚きと共に合点がいったこともいくつかある。

例えば- 以前全日本かNHK杯の採点についての問い合わせに応えた日本の最高学府を出た人物の談は規則の翻訳内容を口頭で伝えただけであった。2020年全日本の羽生選手のSPスピンの件ではなくそれ以前の2019-20か2018-19シーズンのことである。

レフリーとして規則をどう解釈し適用したかという説明が求められているのであって大学入試の英文解釈講座のような話を聞いても無意味と思ったものだった。しかし相手が日本のマスコミ、ファンなど一般人となれば規則書はほとんど読まれていないか全く知られていない訳で英文の翻訳をそのまま読んで回答とすれば充分というのが対応の通例になっているのだろうと理解したのだった。

また2021年ストックホルムワールドとWTTの前後にジャッジパネルについてネット上で誤情報が出回っていたことも当時は不思議に思ったが「特別規程書」と「一般規程書」が膾炙していなければ合点がゆく。レフリー、TC、ATS2人の選出手順はこの2書に記されているのである。かなりの情報通や長年のファンであっても勘違いしているのはどうしたことかと思ったが、この迷路のような内容の2文書の存在を知らなければ調べようもないと謎が解けたのである。

いずれにしても翻訳と出版に経費がかかるのは分かるが国際組織がオープンネットに出している内容を会員限定でしかも有料販売するのは感心しない。また少なくとも2年に一度は更新され流動的な性格の文書をたとえ簡易製本であっても出版することの意義はあまりない。

誰でも分かる事で- ISUと同様にオープンサイトに上げるのが正解。現在有料販売しているモノがいつ発行されたのか分からないが最新版と照らし合わせてアップデートし、その後は原文の管理と同じ様に総会決議などによる更新の度に翻訳も部分差し替えしてゆけばよいだけだ。

以下のリンクは「特別規程書」は2021年版で「一般規程書」は2022年6月の総会の内容が反映されている暫定版。 

ISU文書:特別規程書 2021 Special Regulations & Technical Rules
ISU文書:一般規程書 2022 Constitution and General Regulations (unscrutinized) 

どちらも2022年最新版の正式バージョンが近々出るはず。リンクは右コラムにも常時掲載している。(2020-09-13追記 一般規程書が正式版となった。リンクは同じ。2020-09-14追記 特別規程書2022年正式版が出た。リンクは同じ。)

練習に励む側にも観戦する方にも報道する立場にとってもスポーツ分野における文書管理などそれほど重要ではないことも事実かと思う。皆が興味を持つ話ではないだろう。

スポーツは漫然と見ていても面白いものだが「競技ルール・アスリート・試合運営」の3つの情報を知ればより楽しめると思っている。競技運営規定が明文化され万人に理解されることはフェアプレーへの第一歩となるはずである。

組織の再編成

少し飛躍した話をすれば- ISUもそろそろスピードスケートとフィギュアスケートの分離を考えたらどうかとトリノ五輪ごろから思ってきた。「同じ氷上の競技であるので一緒に管理」という原始的な理由は今やあまり説得力がない。

中国は北京五輪を見据えての事だったと思われる分離作業を平昌五輪直後に始めた。2018年のGPS中国杯を開催できなかったのは分離過程中だったからと理解している。米国、加、露など大国は随分前から分かれている。

ISUにとってももう時期が来ているのではないだろうか。分離手続きの過程で文書も見直し立て直すことができる。外部の専門家に依頼すればそれ程困難なことではないと思われる。

追従型の日本は自ら組織改造に手を付けることはなさそうだがISUが行えばすぐに続くだろう。

リサイタル in シャンゼリゼ

昨年のショパンコンクールで優勝したカナダのブルース・リゥ氏は世界中でリサイタルやオケ協演をしている。

こちらは今年1月のパリでのリサイタル。 

YTビデオ:2022-01-14 Bruce Liu in Théâtre des Champs-Elysées 

巧みさと優美さがあるリゥ氏はピアノのマジシャンのよう。アコースティックサウンドがホールによく響いている。

シャンゼリゼ劇場はいつかは行きたいシアター。音楽やバレエなど多くの名演が生まれている。

アンコールを入れて1時間40分ほど。夏の夜が長く感じられる時にでもどうぞ。


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ご訪問頂き大変ありがとうございます。
皆さまご健康に留意されます様に。
 



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