2021-02-08

全米選手権など雑感

全米選手権の女子

今の世相で一番安定して練習&メンタルを整えられそうなテネル選手が優勝した。リショー氏の振付けも数年になり情に訴えるよりもクールな雰囲気の演技が板についてきた感。ジャンプの入りと出に難しい動きをしていて充実した練習ができていることが伺われた。

リゥ選手のスケーティングが良くなりスピードも出てきて、これは大前進。しかしジャンプは- 極度のプレローテーション離氷とアンダーローテーション着氷で今季はシェルバコワ選手をかわしてPR&URの最優秀賞と思われる。LzとFの跳び分けとブレードアシストの問題はないように見え、エラーエッジとフルブレードについてはシェルバコワ選手に軍配が上がりそう。

全米の解説はこれから3Aとクワドを入れられる等と浮かれていたが昨季までの4LzもPRとURで空中では3回転位しかしていないようだった。試合によっては前向き着氷でDGに見えるジャンプもあった。思い出せる限りではまともに跳んだ4Lzは1本もなく3AもURが多かった。今回の全米の映像では3Lzの着氷が前向きに見え空中2回転位だったのではないだろうか。この3年間見てきて、元々ジャンプをつま先で回りながら離氷・着氷するように覚えて育ったのだろうと想像している。

18-19シーズンにノービス選手として3A着氷した折(2018年8月アジアオープン杯)には初めて聞くコーチの名と共に随分期待をしたものだ。今はクワド・3Aどころか3回転も正確に跳べておらず今後どう採点されるだろうか。国内試合はともかく国際試合でもこれまでと同じくURを取らなければ偏向採点とジャンプ技術の乱れに益々拍車をかけることになるだろう。

そういえば都築コーチが愛弟子について、回転不足でジャンプを覚えたことはない、と言っていた事を思い出す。シェルバコワ、リゥ選手らも幼少期に覚えてしまった間違ったジャンプ方法を変えるのは容易ではないと思われる。

リゥ選手は愛嬌があり度胸もある。のびやかな演技で観客を惹きつける力がありファンダムで人気もある様子。ジャンパーとしてよりもむしろ演技派として成長してゆくのかもしれない。それもアメリカの選手らしい行き方かと思った。

技術内容で一番高難度だったのはグレン選手の3Aとイゾ選手の3F+3Lo。どちらもSPで挑戦している。粗削りでパワフルなグレン選手は果敢に攻めていて胸に秘めた闘志が伝わってきた。

バブル方式は好評だが- 選手が演技中に預けたエッジカバーとマスクを一緒くたにボックスに納めているのはアメリカらしいスロッピーさである。GP-SAも同様だった記憶。

世界選手権とロシアの人々

国際レベルでのパンデミック状況は国際連盟が掌握・理解し判断するのが順当である。各国の連盟は自国内の状況判断と試合などの運営・管理が主な仕事である。自国選手を世界選手権に参加させるかどうかの世界状況なかんずくスウェーデンの状況などの判断は各国まちまちとなり、統一見解があり得ないだけではなくそもそも各国連盟の主責務ではない。

ストックホルムワールド開催は予定通りにしておき、3月1日の各国の参加リスト提出の結果いかんで五輪出場枠を検討する、というのはISU組織の脆弱性を良く表している。すでに様々な詭弁が透けて見えている。皆さんの意向を尊重して進める、と一見民主主義のようだがISU主催の大会開催の可否の決裁責任を各国に委ねてしまっている。

通常の手続きの一部である「3週間前までに出場者リスト提出」とCOVID19による影響で各国がどういう状況かどう考えているか総意をまとめる手続きを混同している。時間軸だけを見ても、わずか3週間前にパンデミック下での大会を開催する場合の手順や準備などを最終決裁するのは遅いの一言に尽きる。

ISUのフィギュアのトップ役員は何をしているのかと思っていると- 自国選手を練習中に訪問しアドバイスをした、とコーチが喧伝している。日本の連盟ですらやらないことだろう- 連盟会長が地方競技会前に一選手を訪問して励ましそれをコーチがメディアに上げる、等という事は起こりえない。国際資格をもつジャッジ達が個人的に又は合宿などでアドバイスをすることはよくある様だがわざわざ世に知らしめるようなことはしない。

皇帝と呼ばれていてもプルシェンコ氏はコーチとしては開発途上か。優勝した選手をホテルのスイートルームでもてなしたりリンク場近くに住居を与えたり、とお金にモノを言わせる行為に走るのは自由だろう。しかし- 列車に乗り遅れたためスイートルームを用意した経緯はあってもトルソワ選手が優勝した同じ試合で2位だったコストルナヤ選手がどう思うかなど全く考えずに公にしなくてもよい内容をむやみに発信している。何でもかんでも派手に宣伝するのはコーチとしての自信欠如と不安からか、それともやはりトゥトベリーゼコーチとの確執があるせいかと思わせる。

家族でリアリティショーに出演するプルシェンコが夫人と共にパブリシティーを重要視するのは自然の成り行きで決して悪くはないが、これはあくまでもスポーツであり競技である。本来知名度や人気度は競技結果に影響してはならない訳だがフィギュアスケートが数多あるスポーツの中でも最もパブリシティーの影響力を受けやすい競技の一つであることは否めない。しかし宣伝によって注目度と話題性のボルテージを上げるだけで競技に勝てる訳でもない。採点問題をスポーツ省に訴えるという善い行いも過度の宣伝活動に埋もれてしまう。

トルソワ選手のジャンプは移籍してから良くなったと言われている。女子の国内競争の激しさは世界一で売り込みに懸命になる心情もあろうがプルシェンコとトルソワの2人がアスリートとしての本来の経験と力を出してゆけばファッション性に訴えたりマーケティングにそれ程注力しなくとも最強のチームになれると今でも思う。

今の所コーチを専業としていて現役時代に試合で4回転を跳んだ実績のあるのは世界でもほんの数人である- プルシェンコ、ランビエル、ジュベール、本田、田村氏ぐらいだろう。そしてトルソワ選手は4Lz、4F、4S、4Tの4種類を試合できめた唯一の女子選手。今は世界選手権への出場権獲得で躍起になっている最中かもしれないが2人が余計なことに振り回されずに何とか折り合いをつけられるようにと思う。

確かに- 現役時代に多くの好成績を修めた選手が必ずしも優れたコーチになるとは限らず、また屈指のコーチについた選手が必ずしも大成するとは限らない。しかし上手くゆけばこれ以上のチームはないだろう。

ISU役員は次回の総会で変わるのだろうか。ロシアやアメリカなど自国第一の政治に走る傾向が強い人物よりも国際組織の役員としての責務を自覚し全うできる人物が選ばれるようにと思う。ルールを熟知し数字にたけているよりも国際組織の運営・管理ができ公平にリーダーシップを発揮できる事が重要であろう- そんな人物は他の惑星のフィギュア界にでも行かなければ居ないのかもしれないが。

COVID19という不測の事態に必死に対応している種々の団体のトップの例は世界中にある。自身が感染しながらも何とか溢れる情報を的確に掌握し英知と人間性をもって前例のないリーダーシップを発揮している人々はたくさんいるのだ。ロシアのような国家体制が身に付いてしまっている年配の人々には困難な事かと察している。

モントリオールワールドに続きストックホルムワールドをどう采配するか取り計らうか- 一連の手腕は現役員らが再選されるかどうかの分かれ目となるかと思われる。


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


ご訪問ありがとうございます。

皆様、引き続き安全に過ごされご健康であられますように。




No comments:

Post a Comment

Contact Form

Name

Email *

Message *