2021-05-16

五月の雑感あれこれ2 4Aの衝撃

WTTジャッジパネル

ジャッジ任命&派遣の件で混乱した情報が出回り多くの誤解を招いた様子。

ISUの一般規定フィギュア規定によればレフリー、テクニカルパネル、GOE&PCSジャッジの任命規定は以下の通り。

- レフリーとテクニカルパネル(TC、TS、ATS)の4ヵ国はWTTの場合はISUが任命
- GOE&PCSを判定するジャッジはWTTの場合は開催国が任命

因みにGOE&PCSを判定するジャッジはISUチャンピオンシップと五輪の場合は13ヵ国が抽選で決まる。

明文化されていないが- ISUにしろ開催国にしろ任命する側が決めるのはどの国かであって特定の人物を指名することはないと思われる。任命または抽選された国はある期日までに誰を送るかISU、大会ホスト国、五輪委員会など関係組織に知らせるとどの試合でも手順化されていたと思う。

話題になっていたジャッジたちパーカー、山本、コゼミアキナ、メリグエット諸氏は平昌五輪男子戦のジャッジも務めている。資格一時停止で罰せられたことは周知のことであるトイゴ氏は伊連盟に重宝されているのか平昌ではペアジャッジに入っている。今回はイタリアの女子選手、羽生選手と一緒に写真に収まりおどけていた。

この面々を見ると2017年4CC、2017年GPS露杯、2019年トリノGPFなども思い出す。

パーカー氏は平昌五輪以来3年ぶり事実上初めての国際試合登場である。平昌の男子FSでネイサン・チェン選手ら米国勢に高得点を付けてネット上で騒がれて以来国際舞台からは身を引いていた。同じ平昌男子戦の中国のジャッジのように罰せられる事はなかったが警告・訓戒ぐらいは受けたのかもしれないと想像していた。国際試合を休んでいる間は全米選手権でジャッジ席に座りGOE満点PCS満点を全ての項目に出してせっせとチェン選手を上げていた。

今回の試合開始時のジャッジ紹介ではアメリカチームかと思われる大歓声が聞こえた。その名を知らないアメリカの選手はいないのだろう。国内試合で「パーカーに助けてもらって好成績を出す」という言い方が聞かれる。米連盟の前会長のオクシア氏がレフリーに入りWTTは1月の全米男子戦と似た構図となった。

正確にはパーカーの国際復帰の一戦めはオクシアと一緒にジャッジ入りした10月のGPSスケートアメリカだった。GPSの初戦であり運営上も今季の大事な試合と思われたがテクニカルパネルの技術審判までも乱れて見るに堪えない採点結果だった。試合終了後ISUから公認記録としないと発表があったのは常軌を逸した採点だった故と察している。(2020年11月03日付記事 ロシアカップ第3戦とラスベガス

パーカーの再来は五輪イヤーへの国際試合復活を意味しているのだろう。今回は控えめに採点し好印象を与えたようである。来季GPSなどから大手を振って登場してくると予想している。

競技結果と人気度

アメリカの関係者はチェン選手の五輪金メダル獲得に未だ不安がある様子だ。

国際試合では18-19シーズン頃から徐々にそして昨19-20シーズン今シーズンと明らかに不当な高得点を大量にそして確実に受けている。今日現在採点だけ見てもチェン選手の優位は揺るぐことはない。その上彼らの心配の最大の種である(笑)羽生選手は五輪は考えていないと何回も明言している。チェン選手に五輪で「幸運があるように」とまで言ってくれている。ストックホルムワールド開始直前まで一選手の喧伝へ注力するISUの意気込みもこれまでにないほどであった。羽生選手への低採点も明らかである。現況からすれば五輪で2回ぐらい大転倒しても優勝させてもらえそうである。

にもかかわらず人々は依然ナーバスになっているのか、何故チェン選手を応援しないのか、羽生選手ばかり支持するのか等とナンセンスな質問を投げかけて行き場のない不安をネット上でぶつけている。無意味なことをやっても虚しいだけではないだろうか。

チェン選手だけではないが、人気、知名度、話題性などに関しては羽生選手に追いつこうとしてもムリである。

チェン選手が世界選手権で2連覇してもアイスショーの席は埋められずショーの数は激減している。今回の世選3連覇そして来るべき五輪金を得ても変わらないだろう。五輪直後の春から初夏ぐらいはパレードなどで若干沸いて終わりか。平昌五輪の直前には随分プロモーションがあったようで友人がスーパーに出回ったチェン選手の写真の入った食品などの写真を送ってくれた。平昌前の女子選手ではワグナー選手がトヨタ?のTVコマーシャルに出ていたらしい。リオかロンドン五輪で金をとった米国の体操選手の顔が入ったケロッグの写真も見たことがある。北京五輪で優勝してもせいぜいそんな所ではないかと思われる。

食品に関して言えば- 羽生選手の顔は食棚どころではない、今や冷凍庫にまで侵入しているのである(笑)アメリカにはギョーザは一般化していないだろう。

画家、ダンサー、音楽家、写真家などフィギュア界を超えてありとあらゆる分野のアーチストたちをはじめ文筆家、文化人など世界中の様々な層の人々を魅了し触発しているのである。言葉の賛辞は世界中で全て言い尽くされている感で拙いブログで表現できることはほとんどない。

好みはそれぞれであり多くの人に好まれているからといってムリに好きになる必要はない事は言うまでもないがチェン選手に限らずこの絶大な人気を超えられるスケーターはいない。

どんなに良い競技結果を出してもその選手の人気が上がるとは限らず従ってフィギュアビジネスの増収には直接つながらない。立場のある人物や団体が競技の採点行為には影響力を及ぼすことができても人気を買う事はできないのである。

ギョーザの明るいパッケージと同じく最近聞いて微笑ましく思ったのは- フィリピンの外務大臣が日本の外務大臣を招いたバンケットで「羽生選手を我が国に連れてきて欲しい」と脈絡もなく公言したという話。2年前の話らしいが人気と知名度は留まる所を知らない。

隣に座って食事をしながらの個人的なおしゃべりではない。ニュース記事になってしまった乾杯の辞である。こちらはフィリピンの大手紙ビジネスミラーの記事。

新聞記事:2019年3月20日 乾杯の辞「パートナーシップの黄金時代」

パペティアーズ

アメリカは現代エンターテイメントのメッカである。真面目で勤勉ではあるがイントロバートなチェン選手にメガスター並の人気と話題性を求めること自体がそもそもムリというものだ。ショービジネスのエキスパートであればチェン選手のスター性の度合いをすぐ見抜けるはずだが、どうしたことかと思う。

競技内容で羽生選手のやることに追従するのはまだ良いが競技リンク外の行動までコピーさせられたり売り込み行為をやらされたりしているのを見ると可哀想にすら思えることがある。プルシェンコ氏の子供と写真を撮ったり、ロシア語挨拶を流したりとチェン選手のパペティアー諸氏による懸命なるマーケティング活動は来年2月までずっと続くのだろう。ムダな投資に見えるが彼らにとっては意義あることなのであろう。平昌でも羽生選手の記者会見が発表されると同様の単独会見を開いてみせたことも思い出される。通訳は要らない訳だがパブリシティ関係と思われる人物を隣に座らせて流れを作っている印象だった。チェン選手が記者会見などで羽生選手を称賛し始めたのも平昌以降である。絶対に驕らずストックホルムワールドの会見でも勝ち続けているのに未だ羽生選手をレジェンドと呼ぶことを欠かさずメディア対応でミスを犯すことはない。

ビジネス観点からのみ見れば- アメリカのTV局やショー関係者が真に$¥を求めているのであれば彼らが最大に注力すべきはチェン選手への投資よりも羽生選手との友好関係を樹立することであろう。

チェン選手の台頭により羽生選手が米国でのGPS試合に出ることはなくなった。最後にGPSアメリカ杯に出場したのは2012年。そして最後にアメリカの地に立ったのは2016年ボストンワールドの折である。もう試合で羽生選手が米国に行くことはないと思われる。

そうなると引退後ショーに来てもらうことが主眼となってくる。世界中から引っ張りだこの羽生選手がどうしたらアメリカのベガスショーに来てくれるか頭をひねった方が賢明だろう。

あわよくばアメリカのツアーに出演承諾がとれればケロッグやギョーザどころの話ではない(笑)大きなマーケットを創り動かせることになるだろう。

ややアスリート達への敬意を欠いたザカリアン調の話にまで展開してしまったが- 要はただ米スケート界のプライドと威厳のためにチェン選手の五輪金を撮りたいならばもう確保されているので知名度を上げるなど余計な心配はしなくてもよいだろうという事が一点。そしてチェン選手の五輪金に将来のショービズの人気上昇と繁栄を期待してるのならその可能性はゼロに近いだろうという事が二点目である。

たとえ羽生選手が五輪に出場してチェン選手が優勝したとしても同じだろう。羽生選手を負かして五輪金を取った方が羽生選手の居ない五輪で勝つよりショービジネスが盛り上がるとは期待していないだろうが、そうだとしたらそれは誤算である。試合で勝つことイコール人気も上に行く訳ではないことは既に明らかだ。

つまり- ザカリアン風に選手ら競技のリソースを商品とみなし焦点を財政の収支に限定するならばチェン選手の北京五輪優勝はアメリカの将来には良くも悪くも影響はほとんどないだろう、というのが順当なビジネス分析結果と思われる。ライサチェック元選手を思い出せば簡単に理解できるのではないだろうか。

一つの未知数

今日現在ただ一つ予測ができない変数がある。4Aである。

WTTの会場で6回ドスンと転倒した姿を皆どのような思いで見つめたか。世界中の人々が時差にお構いなく画面にかじりついて見ている前で何回も転倒する姿を見せるのはやろうと思ってもできることではない。高ランクの選手であれば尚更である。

羽生選手の深く強く大きい魂の決意に震撼としたに違いない。スピードもすごかった。ステップから跳んでいた。転倒の音は会場に響き渡っている。高さも異常である。寸分違えば大怪我をするかもしれない。強靭な肉体と精神の巨大な塊の出現だった。

リンクで一緒だった男子選手たちが刺激を受けないはずはない。賢いチェン選手をはじめ皆感受性が豊かである。

6回ともURかDGに見えたが普段はもっと良いらしい。80歳になったミーシンコーチも歴史の目撃者となれて心躍る数分だったかと想像している。

あれではパペティアー達が焦っても不思議はないのかもしれないとも思った。ネイサン・チェン選手の五輪金が脅かされたと感じ怯えているのかもしれない。

羽生選手はもう別次元に駒を進めている- たくさんの言々句々からそう理解している。世選も国別も何度も一問一答の談話があった。SPの後、公式練習の後、FSの後、EXの前後、等々。1試合で正味20分?ほど(SP+FS+EX)の出演に対して大量のインタビューが毎回発生している。

4Aを着氷したら、その後どうするのだろう。成功した試合はどうなるのだろう- こちらも何かとはやる心を制して4Aの熟成を待とうと思っている。


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ご訪問ありがとうございます。

皆さまどうかご健康で安全に過ごされますように。





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