2020-07-09

2019/20 Season in Review 1 スポーツの多国籍化とアスリートの移籍

フィギュア新年が明け昨シーズン印象に残ったことなどを綴ってみたい。

スポーツの多国籍化

最近はサマーキャンプ等で選手たちが世界中のあちこちへ行ってトレーニングすることが流行っているようで良い傾向と思う。振付けのためだけではなくジャンプやスピンの集中指導で遠征することもある様子。

かつてはアジアの選手が欧米に遠征するのが主流だったが今は外国人選手がコーチやトレーニング環境を求めて来日する時代になった。またロシアの選手がアメリカ拠点のコーチの下で短期修行したりと人材とメソドロジーが自在に行き交うことができるようになってきた。

「典型的なロシア流のジャンプ技術」とか「カナダ人らしいスケーティング」など各々の流派とでも言うか各国の特徴あるお家芸が国籍を問わず伝授され共有することが可能となれば選手たちは技術面と芸術面を磨く術を自由に選択できる。いよいよ競技としてのフィギュアスケートの本格化が期待できる。ロシア人だから、米国人だから、できる/できない/得意、という国籍による格差が縮まってゆくことは競技の発展には良い事だと思う。

ソチ五輪後のインタビューで自国の選手を負かしてしまった事への質問に対しオーサーコーチは「これはインターナショナル・ビジネスなのだ」といった答えをしていた。スポーツ界に限らず世界の最先端の団体、組織で活躍する人材は多国籍化するようになって久しい。最高峰の学府、最先端の企業などに居る人々の多様性は世界の縮図を見るようである。スポーツ界の場合は五輪という最高峰の競技の場が国家間の競争が前提であるゆえかむしろ人材の多国籍化多様化は遅れているのかもしれない。

スケーティングやエレメンツの技術が同じ条件で習得できるようになれば各々の選手が才能、努力、戦略を発揮して個性と実力で競い合うという競技本来の楽しみが大きくなる。現実にはジャッジシステムだけを見ても様々な障害があり連盟組織の問題やらで、選手の実力以外の競技ファクターは平等に、という理想からはほど遠いが競技の純粋な真価は倍増する方向と思う。

以前アルトニアンコーチが、誰もが味方とは限らず正しい情報を与えるとは限らない、と言っていた。短期トレーニングで教授される内容が選手にとって向上につながるかどうか-確かに競技が国家間の競い合いである以上どこまで真剣に外国人選手を指導できるのかは疑問と言えるのかもしれないが今の所一般に知られている範囲ではどの場合もプラスに働いているように見える。

アスリートの移籍

昨シーズンは数々のコーチ変更もあった。

宮原選手とリゥ選手    グラナイトクラブのバーケルコーチへ
紀平選手            クリケットクラブのオーサーコーチ
宇野選手              スイススケーティングスクールのランビエルコーチ
トルソワ選手          プルシェンコアカデミーのプルシェンココーチへ
本田真凜選手          アルトニアンと本田コーチ2人に

トップ選手以外でも移籍のニュースが多かった。

日本人選手の場合は語学の問題が当初は壁となるのかもしれないが短期遠征に慣れている彼らにとっては新しいスケート環境に馴染むのはそれ程苦労はないのかと思う。むしろ一番のポイントは日々の生活にあるのかもしれない。特にアスリートにとってトレーニングと同じ位大切な食生活をどうするかは大きな課題と想像す。プロテインドリンクだけで毎日過ごすわけにはいかない。羽生選手は御家族から大きな支援を得てきた。本田選手は在米中は兄弟姉妹と一緒に暮らし安心感はあるかもしれないが毎日の暮らしを世界のトップアスリートとして律することができているだろうか。紀平選手はお母様が行かれるのか。それともお姉様か。

時期的には五輪までの試合数が限られている現況でコーチ替えが良いのかどうかは分からない。紀平選手はさいたまワールド終了時点でオーサーコーチに行くだろうと思っていた。老年配の先輩?がコーチを替えない方が良いと発言したニュースを読んだ覚えがある。新しい芽を摘んでしまうような年長者の傾向を感じ疎ましく思ったものだ。今になっての移籍は後手感があるが種々良い方向に展開するようにと思う。

トロントでどんな事を習得するか楽しみではある。首をかしげているジャンプの空中姿勢や男女通じて他の選手に比べ右足の振り上げがほとんどなく離氷してすぐ回転が始まる3Aなど紀平選手の個性のどこを伸ばしどこを改善していくのか。昨季3Aは抜群に安定していたがロシアの3人には歯が立たなかった。

オーサーコーチなら北京までの時間に何をどれだけ修正・向上させるのか上手く計らってくれるだろう。実力がありながらこれまで戦略面が今一つだった印象だがやっと足りなかったパズルピースを一つ埋められる感である。


2019/20 Season in Review 記事

1 スポーツの多国籍化とアスリートの移籍

2 セーフスポーツとクリーンスポーツ 

3 女子の技術躍進

4 シーズン記録

 ファンとメディア

6 採点ルールなど20/21への引継ぎ

 

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ご訪問ありがとうございます。
皆様十分気を付けられて安全に健康で過ごされますように。






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