2020-07-25

2019/20 Season in Review 5 ファンとメディア

ISUスケーティング・アワード

ISUアワードは事前の評判は芳しくなかった。

マニアファンでさえも興味がなかったりと反応は様々で話題性に欠けた。MVSは羽生選手以外にはあり得ないが、GPFと全日本の結果とその採点が予想外だったショックがファン層を神経質にさせていたのか過敏に反応している向きもあった。今回もまたチェン選手にするのではないかと不安と猜疑心に満ちてしまったようである。

それも仕方なかったのかもしれない- GPFと全日本は経緯からみて勝利を疑う要素は何もなかった。GPS2戦とも300点越えをした羽生選手、全日本までは大不調だった宇野選手。大きなミスがあったので両試合とも負けは避けられなかったのだろうがファンにとっては敗戦の衝撃に加えて他選手の採点への不満が高まりアワードも同じ様な采配をすると予感してしまったのだろう

チェン選手はGPF直前にコーチと綿密に準備したらしい。ユヅの勝利だろう、とポッドキャストで予想していたジャッキーW氏も何らかの情報を得たのか間近のブログ記事ではチェン優勝との予測に変わっていた。宇野選手はランビエルコーチに見てもらい急速に復調していた。何よりも全日本での羽生選手の疲労はSPのK&Cから明らかだった。両試合とも予想外の敗戦でしかも採点の偏向性は各方面から指摘された。

羽生選手がMVSを受賞して良かった。少なくとも偏向採点をするのは競技会だけでビジネス面は実績通り判定することが分かった(笑)- 神経をすり減らしながらも多くの人がISUだけでなくIOCやGAISFなど各機関に陳情し、商業面も含めて多くの力が集まった結果だったのかもしれない。

あちら側よりもこちら側に座った方が良かったと思ったのはカート・ブラウニング氏。エリック・ラドフォード氏がカナダ代表の選考委員を務めたがカートは受賞者よりも選考委員の役割の方が適任だったろう。以前も触れた(ISUのイニチアチブ2件とSCのOrigin)がライフタイムアチーブメント賞に相応しい功労者はたくさんいる。

ミーシン、タラソワ、プルシェンコ、バトン、キャロル、クワン、ヴィット等々-

米連盟が独自?にやっているホール・オブ・フェーム(殿堂入り)にはカートも含めてプルシェンコ以外は全員選ばれている。

世界のファンダムとメディアの注目を増大し商業的に成功するもの良いが度が過ぎると競技そのものの意義と価値が矮小化してしまう。とどのつまりは競技採点の意味と正当性は益々薄くなり偏向採点が増長するだけかと思う。

こちらが熱心に観戦するのはスポーツ競技であるがゆえでショービジネスを期待しての事ではない。どちらも同じく余暇に楽しむエンターテイメントではある。しかし他の文化・芸術等と比べてパフォーミング・アートとしての側面だけ見れば世界の数人のスケーターの演技以外は残念ながらとてもお金を払ってまで観に行きたいと思うことはほとんどない。スポーツ競技としての側面- 選手たちがトレーニングし、戦略を立て、試合で競い合い、採点され、結果を表彰される -を観ることに価値があるのだ。 

もちろん観戦者の好みと期待はそれぞれで他のスポーツと同じくグッズ購入やファンダムの一部になることによる満足感は何事にも替え難く競技もショーも至福の時間を過ごす機会になり得る。アワードもその一部なのだろう。

いずれにしても選手にとっての最高の喜びと栄誉は競技での勝利とその表彰であろう。終わってみればMVSや新人賞など選手への賞は要らないと思った。選手の競技結果で判定されるコーチ賞も同じである。

意義があると思える3賞は-

衣装作成者を表彰するコスチューム賞

振付師を表彰するプログラム賞
ライフタイムアチーブメント賞

特に衣装製作者と振付師は表彰される機会は他にはないだろう- しかしこれではお金にならずマニーモンガ-興行師にボツにされそうな案か。

露の露出

昨季はロシアメディアの進出が目立っていた。現役選手に加えて往年の名選手やコーチたちの言々が次から次へと流れてきて見入ってしまった。シニアデビューした本田真凜選手の記事一色に染まった五輪シーズン初め程ではないが今はロシア関連のニュースが多い。

またニュース機関だけでなく露連盟の広報と渉外?も大前進した感。何しろ国内選手権の国際放映化には目を見張った。動画自体はこれまでも何とかライブで見れたのだろうが昨季はカナダのバートン氏を解説者として起用し英語解説でしかもYouTubeで放映したのは画期的だった。確認していないがタチアナ氏とザカリアン氏による従来のロシア語解説チャンネルも同時進行していたハズである。

その上開催はモスクワでなくクラスノヤルスク- 北京・東京との時差が1時間・2時間の地を選んだのは中国と日本のマーケットが最大のターゲットとなっている故か。北京五輪も意識しているのか。

またルール運営や採点など直接競技に関係がないファンダムレベルの話題になると露連盟の名誉職にある人物が出てきて何かと発言しそれをメディアが欠かさず報道している。

まさにロシアのフィギュア関係者が総登場してメディア露出している感。女子選手が活躍し競技実績を残していることに加えて興味をそそるゴシップ内容も放出されれば確実に注目が集まる。

ロシアは数年前からドーピング問題で国際社会から追及されている。確か東京五輪と北京五輪は平昌五輪と同じく国名、国旗、国歌を出せないような措置を受けている。今や米国を超えたかと思える程のマーケティング力を発揮しイメージ一新の効力もあるのだろう。

Sight and Sound

日本のスポーツ関連のメディア環境は特殊に見える。スポーツ新聞の数が多くフィギュアに限らず試合結果など同じ内容を複数の新聞社が報道していてよく全社が存続できるものだと感心している。

イギリスやインドなど「ジャーナリズムがヘルシー」と言われる国以外は大手の報道機関は国や資本の傘下にあり何等かの言論統制がある-と理解している。日本から発信される一般記事で国際社会に一光を投じるようなものは皆無ではないが少ない。

スポーツ関連に限れば- 日本のメディアの秀逸な点は写真や映像関係であろう。カメラ技術とフォトグラファー技術は他国を凌いでいるように見える。試合でカメラアングルが良いのは日本とロシア。日本開催の試合はどれも設営も整って見える。ここ2シーズンで披露されたテクノロジー、I-ScopeとI-Statsは共に大好評。

やはり社会問題を解析し国際舞台でリーダーシップを発揮するような役割よりもテクノロジー国として最新のツールを提供し続ける方が日本の土壌には合っているようだ。

昨季の全日本ではテレビ局が選手のジャンプをマルチプル・アングル映像だけでなく着氷時のサウンドまで高音質で提供している。ブラウニング氏のCBC解説で「着氷音で今のジャンプがクリーンだと分かる」と聞いたのは確か五輪シーズンだった。専門家には音だけでもジャンプの質が判断できるのだろう。

ビデオ:2019-12-20 J-national Yuzuru Hanyu 4S multiple angles

こちらのビデオでは坂本選手の3F+3T、横井選手の2A、山下選手の3Lz+3Tの着氷音を聞ける。

ビデオ:2019-12-19 J-national Ladies SP jumps landing sound

一般観戦者にも動きを精緻に見れる高品質の映像と音響が簡単に得られるようになった今、ジャンプのエラーエッジ、ブレードアシスト、回転不足などを見極めるのは容易いことである。

そういえば- オーサーコーチも選手のエラーエッジを指摘されて「批判している人達はLzを跳べもしない」などと方向違いなことを言っている場合ではない。批評者が3Lzを跳べるかどうか(ほとんどは跳べないだろう。オーサー自身も今は跳べないのでは?)が問題なのではなく完全なインサイドエッジが明らかに映像に見えていることが話のポイントでありダダをこねても批評を牽制することはできない。最近は露連盟の駒として使われているかのような感触を持つことがしばしばあるがこの時もそうだった。

商標名は違っていたが昨季はGPFでI-Scopeが採用された。そのうちI-Statsも国際大会に登場してくるかと期待している。そしてマルチ・アングル等も含めて観戦を面白くするためだけでなく審判行為にもテクノロジーを生かせる日が来ることを待っている。


2019/20 Season in Review 記事

1 スポーツの多国籍化とアスリートの移籍

2 セーフスポーツとクリーンスポーツ

3 女子の技術躍進

4 シーズン記録

 ファンとメディア

6 採点ルールなど20/21への引継ぎ

 

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


ご訪問ありがとうございます。

皆さま十分気を付けられて安全に過ごされ健康であられますように。





No comments:

Post a Comment

Contact Form

Name

Email *

Message *